2020年歳出予算、公共投資は前年比で減少

(メキシコ)

メキシコ発

2019年09月13日

メキシコ大蔵公債省が9月8日に国会に提出した2020年歳出計画案によると、歳出総額は前年予算比で実質0.8%増、金融コストなどを除く一般会計で実質2.3%増とほぼ前年並みだ。内訳をみると、経常的経費が0.9%増、年金経費が6.2%増、投資的経費が2.5%増(表参照)。投資的経費のうち、前年比増加は金融投資ほかで、インフラ建設など実物投資は5.4%減少する。公的部門の実物投資額は2018年に過去10年間で最低のGDP比2.6%まで低下したが、2019年1~7月は前年同期比15.8%減とさらに落ち込んでいる。全国工業会議所連合会(CONCAMIN)やメキシコ経営者連合会(COPARMEX)は、2020年も公共投資が減少し続けることを懸念している。

表 2020年歳出計画案(一般会計)の概要

政府が歳出計画で重点を置くのは、(1)福祉政策、(2)治安対策、(3)石油公社(PEMEX)救済の3分野だ。(1)は、全ての高齢者に対する年金の一律支給やニート対策の研修補助(2019年1月18日記事参照)、児童や学生に対する複数の奨学金、地方農村に対するさまざまな補助政策がある。ロペス・オブラドール大統領が議会に宛てた書簡によると、2020年の歳出予算案一般会計の63.6%が社会政策に充当される。(2)では、国家警備隊(2019年3月15日記事参照)の全国展開を進め、犯罪の予防と市民の安全を強化する。(3)については、深刻な経営難に苦しむPEMEXの救済策として、462億5,600万ペソ(約2,544億円、1ペソ=約5.5円)の公的資金注入と、年間400億ペソに相当する税負担の軽減(利益配分税率の引き下げ)を行う。

重点インフラプロジェクトへの投資予算として2020年は、ドス・ボカス新製油所建設に412億5,600万ペソ、サンタルシア空軍基地を核とする首都圏空港ネットワーク整備に93億2,400万ペソ、テワンテペック地峡開発に31億9,500万ペソ、メキシコ市~トルーカ旅客鉄道に30億ペソ、マヤ鉄道に25億ペソ、メキシコ市地下鉄12号線拡張に5億ペソを投じる計画だ。

行政機能の低下が深刻に

省庁別予算配分(添付資料参照)をみると、大統領が重視するエネルギー政策や福祉政策、治安対策を担うエネルギー省、治安市民保護省などの予算が増加する一方、経済省、観光省、大統領府などの予算は大きく減少する。現政権発足後、高級官僚の給与カットや人員削減により、連邦行政機関に人手不足の状況が続いており、国家移住庁(INM)のビザ取得手続きや国税庁(SAT)の付加価値税(IVA)還付手続きなどに大幅な遅延が発生している。輸入許可や貿易関連プログラムの申請窓口である経済省の手続きにも遅れが目立つようになり、行政機能の低下が進出企業のビジネス環境に悪影響を与えている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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