ムンバイ市、大雨・洪水対策で日本の首都圏外郭放水路を参考に

(インド)

ムンバイ発

2019年09月17日

インドのムンバイ市政府(BMC:Brihanmumbai Municipal Corporation)は9月9日、大雨・洪水対策の一環として、東京を中心とした日本の首都圏で導入されている「首都圏外郭放水路外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」方式の採用を市の関係者会議に提案した(「タイムズ・オブ・インディア」紙9月10日)。BMCはムンバイ郊外北部にあるビハール湖とトゥルシー湖に流れ込む大量の雨水を一時的に貯水する大規模地下施設(地下タンク)を両湖周辺に設けることを検討している。

6月から9月にわたるモンスーン(雨季)の時期、両湖に大量の水が流れ込むと、流出河川のミティ川が氾濫する。この川はムンバイを縦断しているため、市内で大きな人的・経済的被害が発生する。

図 ムンバイにおける大雨・洪水対策用貯水設備設置案

河川の氾濫や建造物の倒壊による人的被害に加え、道路が冠水して市街地の交通がまひするなど、広範かつ大きな被害を受けている。また、冠水によりアスファルトなどの下地の砂・砂利が流失し、道路はデコボコになり、鉄道の線路も修復が必要になるなど、交通インフラにも被害をもたらす。ちなみに、2019年は9月の降水量が9日の時点で既に過去25年で最高を記録している。

一方、インドでは一般的に雨季に1年分の飲料水や農業用水を確保する必要があり、治水や灌漑といった水インフラの整備が長年の課題だ。

BMCが導入を提案した日本の首都圏外郭放水路は、洪水を防ぐために建設された世界最大級の地下放水路だ。埼玉と東京を流れる中川など複数の河川の洪水時、一部を水量の余裕がある江戸川へ流すための治水施設で、調圧水槽など大規模な地下施設を伴う。

首都圏外郭放水路方式は、ムンバイの水害問題を解決する1つの方策だが、地下施設などハード面を整備するだけではなく、ポンプなど付随する各種設備を含めた管理システムをはじめ、ソフト面の整備も不可欠だ。こうしたソフト面で実績のある日系企業の商機にもなり得るだろう。

(比佐建二郎)

(インド)

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