国家の保有データの一括体系化目指し「国家情報管理システム」の創設法案起草

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年08月20日

ロシアでは近年、デジタル経済化の推進のため、さまざまな情報の電子化と国家による一括管理が進められている。経済発展省は8月5日、国家の情報を一括管理する「国家情報管理システム」(NSUD)を創設する法案を公表した。

NSUDとは、国や地方自治体、中央銀行、国有企業、エネルギー・輸送インフラなどの自然独占体企業などが扱う、法人登録簿、不動産登録簿、車両登録簿、強制年金保険システムなど国民、法人、資産などの情報を一括で管理する、800以上の国家システム、登録簿、データベースを体系化するプラットフォームだ(ただし、国家機密や商業上の秘密に関わる情報には適用されない)。

法案ではNSUD創設の目的を、国や地方自治体が国民・法人向けにサービスを提供する際に、統一的な方法でのデータアクセスを可能とするためとし、データ利用の品質を向上させるものと説明。具体的には、データの誤りを減らし、信頼性の高いデータを効率的に取得可能とすることで、行政機関にとっては運営を効率化でき、国家管理(監視)の負荷が軽減され、実業界にとっても、これらのデータのビジネスへの利用が可能となる。他方、自身の情報が公開される恐れのある国民に対しては、どのようなデータが国家に登録されているかを調べることができ、ビジネスへの利用の可否を選択できるようにするとしている。

メドベージェフ首相は5月29日に開催された連邦政府会合で、NSUDはデジタル経済化およびデジタル国家管理の核をなすものと指摘。デジタル発展・通信・マスコミ相のコンスタンチン・ノスコフ氏はNSUDのメリットについて、「現時点ではダーチャ(セカンドハウス)や自動車売買に必要な証明書類の取得に時間と労力がかかっている。また、国や地方自治体の情報データベースは情報更新が遅く、最新の情報を反映していないことが多い」とし、これらの課題を改善するものと述べた。

メドベージェフ首相は、NSUDの完全導入は2022年をめどとするが、試験プロジェクトは順次実施し、2019年9月に行われる統一地方選挙での電子投票にも活用されるとしている。

連邦政府は6月7日に、NSUDの目的、課題、原則、創設手続きを記載したコンセプト(2019年6月3日付連邦政府指示第1189号)と、2019年7月1日から2020年3月31日までの間にNSUD創設に向けた試験の実施に関する連邦政府決定(2019年6月3日付連邦政府決定第710号)を公表している。

(齋藤寛)

(ロシア)

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