変化する人材市場、外国の教育機関増も技術系人材の養成が課題

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年08月05日

ウズベキスタンでは2017年9月以降、為替規制の緩和をはじめとする経済構造改革が進み、外資系企業の進出も増加している(2019年7月19日記事参照)。首都タシケント市を中心とした人材市場の需給状況にも変化が生じている。ジェトロは7月29日、日系を含む外資系企業を主要な顧客とする大手人材会社「HRC」の営業部長、アジズ・サアトフ氏に話を聞いた。

(問)外資系企業を含む顧客が貴社に求めるサービス内容に変化は。

(答)当社は人材紹介業務を2006年から、アウトスタッフィング業務(注1)は2014年から実施している。為替や経済活動の制限が強かった時期は、アフトスタッフィング業務の発注が多かった。現在では会社設立が容易になり、市場もビジネス機会も拡大している。顧客は現地法人設立を選ぶことが多く、それに伴う人材紹介業務が増えている。

(問)人材市場は逼迫してきているか。ウズベキスタンで人材が特に不足している分野は。

(答)物流、財務、マーケティング分野でのマネジャー職など、オフィス系業務人材はまだ比較的余裕がある。ただ、2年以上前は1つの募集ポストに20人程度の候補はすぐに集まったが、現在では1ポストに対し10人集めるのに2週間が必要。これは、企業数が増え、失業率が減少傾向にあることを示している(注2)。最も人材が不足しているのは、石油・天然ガス、化学、鉱物分野で、最近の機材を使いこなせる技術者だ。英語能力を加えると、平均給与の1.5倍程度を上乗せする必要がある。IT分野の優れた技術者は、比較的給与の高い欧米企業向けのアウトソーシング会社で働くか、フリーランサーとして働くが、こうした人材は見つけにくい。人材紹介サービスに関心がなかった地元企業も、2~3年前から積極的に利用し始めている。ただし、外国で研修や経験を積む機会のある外資系求人の人気が高い。

写真 「HRC」のアジズ・サアトフ営業部長(本人提供)

「HRC」のアジズ・サアトフ営業部長(本人提供)

(問)最近のウズベキスタンの人材の質に関する変化について、どのように感じているか。

(答)高・中等教育省の積極的な活動の結果、ここ2~3年の間にタシケント市を中心に外国の高等教育機関の分校もしくは提携機関の数が増えた(注3)。英語・国際スタンダードの教育手法での授業が行われ、卒業生が徐々に市場に供給され始めた。外資系の顧客からはそうした機関の卒業生に対し、会社の経営構造やコンプラアンスなどへの理解力・適応力、語学力の高さが評価されている。

写真 外国高等教育機関分校の草分けとされるウェストミンスター国際大学タシケント校(ジェトロ撮影)

外国高等教育機関分校の草分けとされるウェストミンスター国際大学タシケント校(ジェトロ撮影)

(注1)顧客企業(ウズベキスタン国外に所在する企業)が人材会社と業務委託契約を締結し、人材会社は国内で必要とするスタッフ(必要によりオフィス、通信機器など)を確保する。スタッフは人材会社と雇用契約を締結し、人材会社の業務指示命令の下、顧客企業から依頼された業務を実行(代行)する。顧客企業にとって駐在員事務所、現地法人を開設する手間がかからず、税務・労務などさまざまなオペレーションリスクが軽減されるなどのメリットがある。

(注2)雇用労働関係省の発表(7月30日)によると、2019年上半期の全国の失業率は9.1%で、タシケント市は7.7%だった。若年層(15~25歳)の失業率は16.8%と依然高い水準にあるが、徐々に低下(前年同期比0.2ポイント低下)傾向にある。

(注3)欧州(英国、イタリア)、アジア(シンガポール、韓国)、ロシア(モスクワ大学、石油・ガス大学)などの高等教育機関が分校・提携機関を設置している。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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