労働関連法改正法案の議会提出は10月の見込み

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年08月26日

マレーシアのM.クラセガラン人的資源相は8月6日、労働関連の5つの法律改正案について、10月に議会に提出する意向を示した。5つの法律は、1955年雇用法、1959年労働組合法、1967年労使関係法、1990年労働者住宅最低基準法、1994年労働安全衛生法だ。

現在の労働環境に則した改正を目指す

労働関連法の改正については、2018年5月の政権交代以前から議論されていた。マハティール首相側は選挙公約として労働関連法改正を掲げており、同年9月ごろから改正に向けた動きが活性化していた。改正が検討される背景には、現在の労働環境に則していないことが挙げられる。特に、1955年雇用法や1959年労働組合法は立法から60年以上経過しているが、これまで一度も改正されていない。

改正案の検討は人的資源省傘下の国家労働諮問評議会(NLAC)が行っている。NLACには、マレーシア経営者連盟(MEF)やマレーシア労働組合会議(MTUC)などが参加する。また、人的資源省は2018年12月に11分野の技術委員会を立ち上げ、改正案に関する調査を実施している。

産業界は労務コスト増を懸念

主な改正内容案としては、雇用法の適用範囲となる賃金水準の上限引き上げ、週労働時間の短縮、出産休暇の延長、父親の育児休業の導入、深夜労働に関する規定の導入、労働組合の結成やストライキ権確立に関する規定の改正などがある。

雇用法の適用範囲については、現行法では月額賃金2,000リンギ(約5万円、1リンギ=約25円)以下の労働者となっており、それを超えると雇用法が適用されない。そのため、適用外の労働者の雇用条件については、雇用者側で独自の条件を設定できる。MTUCは、高所得国を目指すマレーシアで適用上限は撤廃されるべきとして、上限額を設けないことを提案している。一方、MEFやマレーシア製造業者連盟(FMM)など産業界では、適用上限の撤廃は労務コストの大幅な増加となり、操業に大きな打撃を与えるとして、引き続き上限を設けるべきだと主張する。日系企業からも労務コスト増を懸念する声が上がっている。

改正法案の議会提出は2019年に入って何度か検討されてきたが、産業界と労働者側の議論を考慮して延期されてきた。

(田中麻理)

(マレーシア)

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