中国の上半期の粗鋼生産量は9.9%増、伸び率は主要国で最大

(中国)

上海発

2019年08月05日

世界鉄鋼協会が7月26日に発表した粗鋼生産概況によると、2019年上半期の中国の粗鋼生産量は、前年同期比9.9%増の4億9,217万トンだった(表参照)。伸び率は上位10カ国の中で最高となり、世界生産の53.2%を占めた。中国の前年上半期からの純増分(4,434万トン)は、世界全体の純増分(4,306万トン)を上回った。

表 2019年上半期における粗鋼生産量上位10カ国の内訳

世界で粗鋼生産が増加したのは、中国がインフラ投資など景気対策を実施したことが影響しているとみられる。ただ、あふれた鋼材が市況を押し下げており、2019年上半期の中国の鋼材平均価格指数は109.48で、前年同期に比べ3.6ポイント低下した。一方、鉄鉱石の輸入単価は1トン当たり74.18ドル(2019年1月)から97.51ドル(2019年6月)と3割強も上昇したため、鉄鋼メーカーの収益力の悪化が鮮明になった。

中国鋼鉄工業協会の発表によると、2019年上半期の会員企業の総売上高が10.9%増となったのに対し、売上原価は15.2%増と売上高の伸びを上回った結果、営業利益は30.7%減の大幅減となった。

再び供給過剰の荒波が迫る

2019年下半期の国内粗鋼需要について、中国鋼鉄工業協会は伸び悩むと見込んでいる。2019年上半期の固定資産投資の伸び率は5.8%と、第1四半期に比べて0.5ポイント低下したほか、鋼材の川下産業である金属製品製造や設備製造、自動車製造などの生産の伸び率も減速している。また、各地が需要創出に力を入れる中、粗悪な鋼材である「地条鋼」が復活し始め、鉄鋼の供給過剰の荒波が再び押し寄せてくる可能性もある。

2019年上半期の鋼材輸出量は前年同期比2.6%減の3,440万トンだった。鉄鋼メーカーは国内販売を優先しているが、中国経済の冷え込みが顕著になれば、鋼材が国外に流出する可能性は高まる。

(劉元森)

(中国)

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