開かれたメルコスール推進への影響懸念、アルゼンチンの予備選結果

(ブラジル、メルコスール、アルゼンチン)

サンパウロ発

2019年08月20日

現地紙「グローボ」(8月13日)によると、ブラジル政府は8月12日、アルゼンチンでの大統領選挙の予備選挙結果を受け(2019年8月13日記事参照)、対処方針を関係省間で議論したもようだ。開かれたメルコスールへの改革に異を唱える、野党で左派のアルベルト・フェルナンデス候補が本選挙で当選する可能性に備えるためだ。

メルコスール改革を推進する上でアルゼンチンが今後、障壁になる場合、ブラジルは代替案もあり得ると政府当局筋は明らかにした。

経済省のルーカス・フェラス貿易局長は前日の8月11日、メルコスール対外共通関税率(TEC)を撤廃し、加盟国が独自に自国の関税率を設定できるメルコスール規定柔軟化案も議論されていると明かした(同紙8月12日)。

ボルソナーロ大統領はこれまで、同じく経済自由化路線を唱えるアルゼンチンのマウリシオ・マクリ現大統領への支持を表明していた。しかし、予備選挙の結果を受けて懸念を表明、今後の対応について関係省間での協議を指示した。

メルコスール改革における2つの優先事項のうち、1つはTEC税率の引き下げだ。ブラジル経済省および外務省は、TEC税率を原則50%削減したいとしている。加盟4カ国の交渉担当者は2019年4月に協議を開始し、11月中旬に見直し案を起草する予定だ。同時並行で、TECの例外品目数の削減案にも取り組んでいる。ただ、メルコスール改革に消極的なアルゼンチンのフェルナンデス候補が大統領選挙に勝利すれば、同国は恐らく、TEC引き下げ案に反対するだろうとの懸念が出ている。

もう1つの優先事項は、メルコスールが進める他国・地域との自由貿易協定(FTA)交渉の推進だ。メルコスールは2019年6月28日に、EUとのFTA交渉で政治合意した。現在は、欧州自由貿易連合(EFTA)、カナダ、韓国、シンガポールと、それぞれFTA交渉を行っている。アルゼンチンの選挙動向によっては、こうした交渉が停滞すると懸念されている。メルスールは、加盟4カ国による全会一致での承認を必要とするコンセンサス方式を採用しているため、アルゼンチンが交渉の障害となる可能性があるためだ。

一方、統合開発研究センター(CINDES)のサンドラ・リオス理事は、EU・メルコスールFTAについて「EU加盟各国の議会承認とメルコスール加盟国それぞれの議会承認で発効するため、アルゼンチンにおける議会承認の遅れは、ブラジルを混乱させるものではない」との見方を示している(「フォーリャ・デ・サンパウロ」紙8月13日)。

(大久保敦)

(ブラジル、メルコスール、アルゼンチン)

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