2019年通年の経済成長率見通しは「0.0~1.0%」、再び下方修正に

(シンガポール)

シンガポール発

2019年08月26日

シンガポール貿易産業省(MTI)は8月13日、2019年通年の実質GDP成長率予測を、「前年比0.0~1.0%」へと下方修正した。MTIは5月にそれまでの予測「1.5~3.5%」から、「1.5~2.5%」へと下方修正しており(2019年5月28日記事参照)、通年GDP成長率を下方修正するのは2019年に入って2回目となる。MTIは発表の中で、2019年通年のGDP成長率は「予測レンジ(0.0~1.0%)の中間あたりとなる」との見通しを示した。

MTIは、3カ月前と比べて国際経済の先行き不透明感が深まるとともに、下方リスクが高まったとした。今後のリスク要因として、(1)米中貿易摩擦の混迷化、(2)予想を上回る中国経済の減速が米国の対中制裁でさらに深刻化する可能性、(3)英国の新政権による合意なきEU離脱の可能性、(4)香港のデモ、日韓の貿易摩擦、北朝鮮やホルムズ海峡での緊張の高まり、などのリスクを挙げた。また、シンガポール国内経済も、上半期に予想以上に低迷したエレクトロニクスと精密エンジニアリングの両部門が、世界の半導体需要の見通しの悪化を背景に引き続き低迷するとみている。さらに、国内の化学部門も、中国の輸入需要の停滞により軟化が見込まれる。

チャン・チュンシン貿易産業相は同日、成長率予測の引き下げについて自身のフェイスブックで、「この先の困難に備える必要があるが、過度に悲観的になる必要はない」と述べた。同相は、フィンランドのエネルギー会社、ネステによる再生エネルギープラントの拡張など大型投資を例に挙げ、シンガポールが「引き続き良好な投資を獲得できるのは、外国投資家が長期的な価値を評価しているからだ」と指摘した。

第2四半期の対前期比GDP成長率、一転マイナスに

一方、MTIは同日、2019年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率の改定値が、前年同期比0.1%だったと発表した。また、前期比(季節調整済み)ではマイナス3.3%と、第1四半期の3.8%から一転、マイナスになった(表参照)。

分野別では、卸・小売りが前期比7.9%減と、大きく減速した。また、建設も5.5%減と、前期の13.7%の2桁増から大幅減となった。製造業も3.4%減となったが、前期と比べるとマイナス幅は縮小した。

(南原将志)

(シンガポール)

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