チリで初めて5Gを使用した実証実験へ

(チリ)

サンティアゴ発

2019年08月08日

通信次官官房(SUBTEL)は7月31日、記者会見を開催し、スイスのABBグループがスウェーデンの通信機器メーカーのエリクソン、チリの電気通信会社エンテルと提携して、チリ国内で初めて、第5世代移動通信システム(5G)を使用した遠隔操作の実証実験を行うと発表した。この実験は、隔たった場所にあるモーターとロボットアームを、4Gの約100倍の通信速度を有する5Gの制御システムを通じて操作、作動させるというものだ。チリ政府は、2019年2月にSUBTELを通じて、国内のさまざまな産業分野で、5Gテクノロジーの開発と実証実験を推進することを決定している。パメラ・ジディ通信次官は会見で、産業界、学界、イノベーションセンターなど、5Gの実証実験に関心のある業界に対して、実験への参加を促す呼び掛けを繰り返し行った。また、この実験結果は将来、5Gのネットワーク上で発生し得る展開を予測するための貴重な情報源となるとも述べた。

5Gの利用により、チリの主要産業の鉱業分野では大きな恩恵を受けることが予想されている。会見で、ABBチリの鉱業部門のサービスマネジャーであるフランシスコ・エレーラ氏は、従来、作業員が行っていた地下鉱山の奥深くでの作業において、拡張現実(AR)を利用し、専門家がサンティアゴのオフィスにいながら自ら作業を実行できるようになると述べている。また、エリクソン・チリのエンソ・スニノ社長も、5Gは鉱業部門において従業員の安全性や福祉を向上させながら、仕事の効率を上げ、人間と機械の相互作用を強化することができると話す。

アンドレス・クブ科学技術知識イノベーション相は会見に同席し、「これはチリの産業界にとって歴史的な出来事で、現政権の間に5Gの導入を開始し、チリを第4次産業革命へ導くというピニェラ大統領の公約とも一致している。チリが中南米における5G開発の先駆者となり、この進歩が鉱業、物流、オペレーションなど、さまざまな分野における研究開発、イノベーションの促進や、起業家によるプロジェクトの後押しとなることを望む」とコメントした。

(岡戸美澪)

(チリ)

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