大蔵公債省、総額2兆6,190億円規模の景気刺激策を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2019年08月07日

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は7月31日、2019年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率速報値について、季節調整済み前期比で0.1%増と発表した。第1四半期(1~3月)がマイナス0.17%だったが(2019年5月30日記事参照)、第2四半期がプラスに転じたことで、テクニカルリセッション(2期連続のマイナス成長)は避けられた。GDP成長率の確報値は8月23日に発表される。依然として低成長が続いていることに変わりはなく、大蔵公債省(SHCP)は7月29日付で、総額4,850億ペソ(2兆6,190億円、1ペソ=約5.4円)に上る景気刺激策を発表した(7月29日付政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

今回の景気刺激策は歳出を増やさずに経済成長を支えることを目的とし、主な実施内容は以下のとおり。

  1. インフラ建設プロジェクトの推進
  2. 中小零細企業、農村・消費者向けの低融資拡大
  3. 各種政府調達の前倒し実施

インフラ建設プロジェクトでは、歳出に悪影響を及ぼすことのないかたちで、道路建設、水利施設や都市建設分野、通信インフラ分野で民活プロジェクトを実施するとし、ヌエボレオン州の環境・廃棄物処理機構(Sistema Integral para el Manejo Ecológico y Procesamiento de Desecho)のプロジェクトには100億ペソの投資を見込む。また、チワワ州のシウダフアレス市では都市交通開発プロジェクトを実施し、20億ペソの投資を実現するとしている。

中小零細企業向けのプロジェクトとしては、国立金融公社(NAFIN)が新たに1万6,000の中小零細企業を対象に専用窓口を設置して貸し付け支援を行うほか、連邦担保協会(SHP)は、正規労働で得た収入のみではなくインフォーマル部門で得た収入も貸付時に正規の収入と見なす労働者向けの住宅ローンプログラムを9月に開始する。そのほか、農村向け融資など各種開発銀行で総額2,700億ペソの貸し付けを13万の中小企業と37万の零細企業を対象に実施する予定だが、投資意欲が低下している状況下で、中小零細企業からどれだけの申し込みがあるかは不透明だ。

さらに、2020年に予定されていた総額1,160億ペソの政府調達について入札を前倒しで実施し、経済効果を狙う。

政府の景気刺激策の発表を受けて、日本経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は今回政策の実施を歓迎しているが、カルロス・サラサール・ロメリン会長は「経済成長に必要な民間投資を促進するには、政府への信頼と安定的な投資環境が欠かせない。企業家は政府からの建設的で明確なメッセージを期待している」とコメントしている(CCEプレスリリース7月30日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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