半導体など電子産業中心に製造業生産が低迷、雇用調整検討する企業も

(シンガポール)

シンガポール発

2019年08月02日

シンガポール貿易産業省傘下の経済開発庁(EDB)の発表(7月26日)によると、6月の製造業生産高指数(速報値、2015年=100)は121.9と、前年同月比6.9ポイント減だった。同指数は3月以降、前年同月比ベースで4カ月連続のマイナスとなった。業種別にみると、主要6業種のうち、特にエレクトロニクス(18.8ポイント減)、輸送エンジニアリング(14.2ポイント減)の落ち込み幅が大きった。エレクトロニクス分野の中でも、半導体(21.8ポイント減)、コンピューター周辺機器(23.9ポイント減)で落ち込みが目立ち、エレクトロニクスを取り巻く生産環境が一段と厳しさを増している。

図 製造業生産高指数およびエレクトロニクスの上昇率推移

半導体産業、今後3~6カ月の事業見通しは鈍化

シンガポールの半導体産業は、米中貿易摩擦など世界経済の先行き不透明感の高まりなどを受けて生産調整局面にあり、一部では人員整理などの取り組みを検討しているもようだ。地場の半導体組み立て・検査のUTAC社は、国内で勤務する約1,700人について、2019年末までに10~20%削減する予定だ(「ロイター」ウェブ版7月24日)。また、「ストレーツ・タイムズ」紙(7月26日)によると、地場エレクトロニクス部品販売のシリアル・システムは、米国テキサス・インスツルメントとの取引が減少したため、同社の中国、韓国などの海外拠点の人員の約30%を削減する計画のほか、米アップルのサプライヤー企業であるオーストリアAMS社も人員削減を予定しているもようだ。

シンガポール半導体工業会(SSIA)のアン・ウィー・セン事務局長によると、同国内の半導体関連工場では最大生産能力の8割程度の操業率で、中には同水準を20ポイント下回る企業もある。同事務局長は米中貿易摩擦などにより「先行きに不透明感があり、今後3~6カ月の事業見込みは鈍化する」とみている。

(藤江秀樹)

(シンガポール)

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