日系のAAICがKOBO360に出資、西アフリカへの進出を加速

(ナイジェリア)

ラゴス発

2019年08月26日

ナイジェリアのスタートアップKOBO360が8月13日、シリーズAラウンドとして総額3,000万ドルの資金調達を発表した(2019年8月26日記事参照)。フォロー出資者として、日系のAAICが運営するアフリカヘルスケアファンド(AHF)が名を連ねた。今回出資を決めたAHFは、AAICが2017年7月にアフリカのヘルスケア領域・イノベーション分野に特化する投資ファンドとして設立された。ケニア・ナイロビに拠点を置き、東アフリカを中心として既に17社に出資している。

代表の椿進氏は8月21日、ジェトロのインタビューに対し、KOBO360への出資の理由を「他のアフリカ・スタートアップにはみられない極めて高い成長性を示している点だ」と話す。非効率な物流システムを改善し、既得権益を破壊せずに、荷主にもドライバーにもメリットがある仕組みを構築していることに加え、「スケール(アップ)しても赤字経営が続くスタートアップが多い中、既に黒字化できるモデルを確立していることが素晴らしい」と続ける。製薬会社なども顧客に持つKOBO360への出資は、AHF(AAIC)が注力するヘルスケア領域にも十二分に裨益(ひえき)するとの考えだ。

AAICは、ナイジェリアのスタートアップ・シーンに大きな可能性を見いだしている。KOBO360のような、特に情報通信技術(ICT)を活用した分野では「ナイジェリアを制する者がアフリカを制す」と、ケニアに続いて同国のラゴスに拠点設立を準備中だ。ラゴスに駐在員を置き、スタートアップへの投資とバリューアップに向けた活動を加速させる。椿代表はナイジェリアの特色について、「ビジネスの伸びや事業のインパクト、経営者の質など、どれをとってもアフリカでずばぬけている。特に経営者は、ケニアや南アフリカ共和国では欧米人やインド人が多いのに対し、ナイジェリアはほとんどが現地人。しかも海外のトップ校で学び、トップ企業で経験を積んだ『ピカピカの人材』だ」と語る。2018年のナイジェリアへのベンチャーキャピタル(VC)投資件数は、ケニアや南アを追い抜き、アフリカでトップとなった。同社に限らず、海外からナイジェリア・スタートアップへの注目は年々高まっており、有望なスタートアップには投資がさらに集まっていきそうだ。

(山村千晴)

(ナイジェリア)

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