マクロ統計算出手法を国際基準に移行、過去9年のGDP統計を見直し

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年08月27日

ウズベキスタン閣僚会議は8月19日、同会議決定第691号「ウズベキスタン共和国の現代的国民経済計算の導入と経済統計のさらなる向上について」を採択、国際金融機関と協力してマクロ経済計算手法と過去の統計を見直すことを決定した。

国民(マクロ)経済計算の現在の国際基準であるSNA(System of National Accounts)2008に沿い、2019年中にアンケート内容、データ収集手続き、家計消費や経済活動などの項目分類、統計算出方法などを見直し、2020年1月1日から段階的に民間最終消費支出を含むマクロ経済指標の算出に移行する。統計の見直しは、a.国民経済計算(マクロ経済)、b.予算・政府財政、c.金融・対外統計の3つを軸とし、a.は世界銀行、b.c.はIMFなどの協力を得て作業を進める。

a.の国民経済計算に関しては、新しいマクロ経済指標の算出方法により、過去9年間の生産面・消費面でのGDPの再計算を行い、2010~2016年までは年計、2016~2018年は四半期ごとに統計を見直す。シャフカト・ミルジヨエフ大統領は2018年3月、2017年のGDP成長実績を、統計算出手法見直しを理由に、事前の予想値より大幅に引き下げた経緯がある(2018年3月6日記事参照)。今回はイスラム・カリモフ大統領時代に踏み込み再計算を実施する。また、世界銀行が主導する国際比較プログラム(ICP)にウズベキスタンとして初めて参加し、PPP(購買力平価)などを基準とした国際比較などにも対応する。

b.の一般政府部門の経済計算については、IMFの政府財政統計マニュアル2014年版(GFSM 2014)を導入し、予算外基金や国営企業・公的団体などを含めた政府部門全体の歳入・歳出の動きを把握できるようにする(注)。c.に関してはIMF「通貨・金融統計マニュアル・編纂ガイド2016年版」に沿い、IMFの国際金融統計年報への協力や国内の非銀行金融機関(保険・リース会社、小規模金融、質・仲介業など)の実績も反映する制度を導入する。

今回の国際金融機関の支援による統計算出手法の見直し・国際基準導入で経済統計の精度が上がり、政府の国家経済運営の正確性が高まる。国際的にはウズベキスタン政府が発表する統計への信頼性が高まるほか、各国政府、国際金融機関が提供する援助や融資などの決定・実行や、民間企業による投資、事業リスクの判断が行いやすくなるなどのメリットが想定される。

(注)当地の国際機関関係者は、政府のバランスシートを把握する難しさの1つとして、ソ連時代からの伝統として続く国営企業(同子・孫会社)、公的団体(同地方組織)などの間で相互に配分・支給される複雑な予算・補助金制度の存在を挙げている。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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