世界遺産ラボー地区でワイン製造事業者の祭りが20年ぶりに開催

(スイス)

ジュネーブ発

2019年08月09日

ワイン畑とワイン農家の家屋が織りなす風光明媚(めいび)な景観と、ワイン生産の長い歴史と伝統が評価され、ユネスコの世界文化遺産に登録されているスイス・ラボー地区で、20年ぶりとなるワイン製造者組合主催の祭典「フェット・デ・ビニュロン」が、7月18日から8月11日まで開催されている。人口約2万のブベイの町に100万人の来場を見込んでいる。

期間中は、ブドウの生育から収穫、ワインの瓶詰めまで、ワイン生産者の四季や時々のイベント、夢をパフォーマンス化したショー、市内でのワインセラー開放、市内各所でのコンサートやパレードなど、多様な行事がとり行われる。スイス国鉄SBB/CFFも、観光客の増加を見込んで、1,000本以上の特別列車を増発するなど、開催期間中の輸送力を強化すること発表している。

この祭典は1797年に、この地域の最優秀ワイン製造事業者を表彰し、祝ったイベントが発祥だとされている。以降、「一世代で1回」となる、ほぼ20年おきに開催され、長い歴史を持つ祭典だ。ラボー地区の自然景観だけでなく、このフェット・デ・ビニュロン(Fete des Vignerons)も、ユネスコの無形文化遺産に2016年に登録されている。

この祭典では、伝統と現代の融合が前面に押し出されている。町で出迎える人々は、中世におけるボー州および近隣のフリブール州の民族衣装に身に包み、当時の表彰式典を再現した屋外パレードが行われる日もある。また、中心となるスタジアムのショー(公式YouTubeチャンネル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、ヤギ、馬、牛も登場する。

一方、旧来の木製の演壇に代わり、このイベントのために整備された2万人収容のスタジアムには最新技術が導入されている。1,200平方メートルのメインステージは、うち870平方メートルがLEDスクリーンの床になっており、海や風の描写、スイスの伝統工芸である切り絵の投射といった演出を効果的に行える工夫がされている。メインステージの周囲4方に階段状の300平方メートルのステージを配置し、そのうち2つは場面に応じて階段部分が跳ね上がり、大道具や演者がバックステージからスムーズに移動する開口部となる。ショー以外では、屋外でのワインや食事のサービスには、最近の環境保護の流れに沿って、再利用可能なプラスチック製などの食器での提供が義務付けられている。

写真 メインスタジアムの様子(ジェトロ撮影)

メインスタジアムの様子(ジェトロ撮影)

ショーのチケットは、最も高額な座席で360スイス・フラン(約3万9,600円、1フラン=約110円)もすることや、祭典の予算(今回100万フラン)が毎回倍増していることなどを疑問視する報道もある。しかし、子供から老人を含め5,500人に上るショーの出演者が全て地元出身のボランティアで、スタジアムの管理や誘導も地元住民によるものであることに、この祭典にかける地元の意気込みが感じられる。

(和田恭)

(スイス)

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