日米両首脳、2国間貿易交渉の進展を確認

(米国、日本)

ニューヨーク発

2019年08月26日

安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領は8月25日、G7首脳会談が行われたフランスのビアリッツで、2国間の首脳会談を経て記者発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。両首脳および記者発表に同席した茂木敏充経済再生担当相とロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表によると、両国政府は農産物、工業製品、デジタル貿易の3つの柱からなる内容で意見の一致をみたとしている。両国政府は、残る課題や協定文の調整を事務レベルで行った上で、9月下旬にニューヨークで開催される国連総会の機会を捉えて、首脳間で合意文書に署名することを目指す。

米国は日本の農業市場へのアクセス改善を強調

米国側は、日本との貿易交渉の結果が、米国の農業界にとって大きな成果であることを随所で強調した。米中貿易摩擦を受けて、中国側は米国産農産品の購入を停止する措置に出ており(2019年8月7日記事参照)、主要な売り先を失う米国農業界は打撃を受けている。2020年の大統領選挙で再選を狙うトランプ大統領にとっては、農業州での支持率を失うことは痛手となる。

ライトハイザーUSTR代表も、日本は米国の農畜産品にとって約140億ドル規模の世界第3位の市場で、今回の合意により、そのうちの70億ドル分の市場が開放されるとした。例として牛肉を挙げ、より低い関税で日本へ輸出できるようになり、既に発効した環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)や日EU経済連携協定(EPA)の参加国と、より効果的に競争ができるとしている。

なお、本協定とは別に、トランプ大統領は、米中貿易摩擦を受けて余剰が出ているトウモロコシを、日本側が輸入することに合意したとも述べた。

米国側の自動車輸入関税は据え置きの方向

米国がTPPを離脱する前に、日米間がTPPで合意していた米国側の自動車関税(2.5%)を25年かけて撤廃する点に関してライトハイザーUSTR代表は、関税削減の対象とする工業製品の中に「自動車は含まれていない」とした。また米国は、1962年通商拡大法232条に基づいて、11月13日を期限に、自動車・同部品の輸入を制限する措置を検討しているが(2019年5月20日記事参照)、その点についての言及はなかった。

なお、日米貿易交渉が合意に至った場合に、米国議会での批准が必要になるかとの点に関して、米上院で通商を所管する財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党、アイオワ州)は8月20日、「日本との合意に関して、議会が行動を取る必要はないと思う」とし、「もし必要な場合、私は行動を取る準備ができており、下院でも問題なく物事が進むだろう」としている。

(磯部真一)

(米国、日本)

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