メキシコ産トマトに関する米国のAD調査再停止で合意

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2019年08月23日

米国商務省とメキシコのトマト生産者5団体は8月20日深夜、米国政府が5月7日から再開していたメキシコ産トマトに対するアンチダンピング(AD)調査(2019年5月9日記事参照)を再び停止する協定に合意した。米国内で30日間のパブリックコメント公募を経て9月19日に発効する。発効後はメキシコ産トマトに課税されている17.56%の暫定AD税が撤廃され、それまでに支払った同税額は還付される。米国商務省は7月23日にメキシコ産トマトのダンピングマージン(AD税率)が暫定税率を上回る25.28%になると発表していたため、今回の合意でそれが回避されたことは、メキシコにとっては朗報だ。

しかし、合意獲得のためにメキシコ側が大幅に譲歩したため、合意内容は必ずしもメキシコ側が望んでいたものではない。米国商務省のプレスリリースによると、最低輸入価格がトマトの種類に応じて引き上げられる。通常のトマト(ラウンド、ローマ)は季節や栽培方法(自然栽培、ハウス栽培)にかかわらず、1ポンド当たり0.41ドル、チェリートマトやグレープトマトは、バルク包装で同0.45ドル、個包装で0.59ドルとなる。また、枝付きや房取りの分類が新設され、前者が0.46ドル、後者が0.59ドルとなる。オーガニック栽培の場合は通常価格より4割増しだ。米国側輸入統計によると、メキシコ産トマトの平均輸入価格は、2018年に1ポンド当たり0.58ドルだが、「ローマ」タイプに絞ると0.34ドルとなり、最低輸入価格の0.41ドルを下回る。

さらに、米国側の要望に基づき、メキシコからの輸入量の約92%(当初の要求は100%)は国境税関で品質検査を行うことが定められ、検査員に対する報酬だけで年間1,700万ドルのコストアップになるという(「レフォルマ」紙8月22日)。

米国の消費者にとっても重要なメキシコ産トマト

メキシコは2018年に378万トンのトマトを生産し、183万トンを輸出している。輸出量の99.7%が米国向けで、過去10年間で対米輸出量は76.4%増加している。米国側の統計によると、米国のトマト輸入に占めるメキシコ産の比率は2018年に数量ベースで91.2%に及び、米国で消費されるトマトの約半数がメキシコ産(「エクスパンシオン」誌電子版8月21日)だ。今回合意した協定によるメキシコ産トマトの輸入価格上昇は、米国の消費者にも影響を与え得る。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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