米老舗百貨店バーニーズ・ニューヨーク、破産法第11章の適用を申請

(米国)

ニューヨーク発

2019年08月19日

米国の老舗百貨店バーニーズ・ニューヨーク(本社:ニューヨーク、以下:BNY)は8月6日、米国連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。BNYは引き続き事業を行う方針を発表し、ニューヨークやサンフランシスコなどにある旗艦店や通販サイトなどの運営は続けるとした一方で、全22店舗のうち15店舗を閉鎖する計画を明らかにした。

不動産賃料の高騰などが要因

破産申請に至った要因として、競合するオンラインブランドの台頭、消費嗜好(しこう)の変化、不動産賃料の高騰などが挙げられている。例えば、ニューヨーク市内にあるマディソン・アベニュー店の賃料は1月の契約更新時に、年間約1,600万ドルから約3,000万ドルへと2倍近く跳ね上がり、EBITDA(注)がほぼなくなってしまうほどだったという(「CNBC」8月6日)。近年、同市内の家賃高騰は業界全体を揺るがす問題になっており、ラルフローレンやギャップ、ロード・アンド・テイラーなど米国を代表する小売業者が撤退を表明している。

BNYの最高経営責任者(CEO)ダニエラ・ビターレ氏は「業界内の多くの企業と同様、BNYの財務状況は厳しい小売市場環境と、市場需要に比べて著しく高い賃料によって多大な影響を受けてきた」と述べた(「BBC」8月6日)。こうした課題を乗り越え、良質なサービス・製品・体験を提供し続けるため、「事業の売却手続きやリース契約の見直し、業務の最適化」を進めていけるよう、今回の破産申請の決断をしたと述べた。

なお、BNYは破産申請後、自身の売却先が見つかるまでの事業資金として、米国投資会社ゴードン・ブラザーズと米国金融サービス会社ヒルコ・グローバルから、計7,500万ドルの追加融資を受けるとされている。

BNYは1996年にも多店舗展開に失敗して破産法第11章を申請し、今回2度目の申請となった。2012年には債務と株式の交換(デット・エクイティ・スワップ)による過剰債務の圧縮も行っており、順調な経営が続いてきたわけではない。競合する米国百貨店バーグドルフ・グッドマンのファッション・ディレクターだったロバート・バーク氏は「バーニーズに入店すると、他店にはないような商品を発見することができ、とても刺激的だった」と振り返る一方で、「最近はブランド力のあるオンライン事業者が自ら店舗を構え、消費者に直接販売するようになっており、かつてバーニーズが独占していた市場で大きなシェアを有するようになっている」と述べた(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版8月6日)。

米国では昨今、オンライン事業者の台頭や消費嗜好の変化により、小売業、百貨店の再編が相次いでいる(2018年8月31日記事2018年10月23日記事参照)。

(注)Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略。

(樫葉さくら)

(米国)

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