女性の権利訴えるスト実施、賃金格差や保育園不足など課題

(スイス)

ジュネーブ発

2019年07月01日

スイス各地で6月14日、女性の権利向上を訴えるための大規模なストライキ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが行われた。1991年以降2度目の実施で、参加者は女性の権利向上運動のイメージカラーである紫色の衣装に身を包んで行進した。スイス労働組合連合(SGB/USS)の6月16日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、スイス全土で50万人強を動員し(うち16万人はチューリヒ)に上り、1918年のゼネスト以来、最大規模のストライキとなった(ただし警察はより少ない動員数を発表)。シモネッタ・ソマルーガ環境・運輸・エネルギー・通信相も、ベルンでのデモに参加した。

連邦統計局によれば、女性の平均月額賃金(2016年)は男性より18.3%低い(民間部門で19.6%減、公的部門で16.7%減)。女性が午前9時から午後5時まで働くのと同じ賃金を、男性は午後3時24分までで稼ぐことができ、同時刻以降は女性からすれば、ただ働きも同然という賃金格差を訴えるため、幾つかのストライキは同日午後3時24分から開始された。

前回のストから4半世紀余りが経過したが、いまだに不平等が解消されておらず、女性の社会参画をより進めるために改善すべき課題が残されているとの考えから、今回のストが呼び掛けられた。

例えば、スイスでは女性には14週間以上の産後育児休暇が認められている一方、男性に対しては1日しか認められていない。男性が休暇を取得して、出産直後の育児に参画できる法制度が整備されていないことから、結果的に女性に負担がかかってしまうといわれている。保育園不足も課題となっている。需要に対して数が足りておらず、保育料も高額で、「ル・トン」紙(6月12日)によると、チューリヒの場合は2013年時点で年間平均3万5,000スイス・フラン(約385万円、1フラン=約110円)、ジュネーブの場合は年間平均4万フランだ。

一方で、自治体による取り組みとは別途、企業が共同で従業員向けに保育サービスを提供する取り組みもある。チューリヒに本社を置く、電力などのエンジニアリング企業アセア・ブラウン・ボベリ(ABB)グループは、女性の労働市場参画を進めるための協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを1996年に設立し、アールガウ州とチューリヒで、会員企業の従業員向けに保育所と学童保育施設を提供している。会員企業には、重工業分野のコングロマリット企業ボンバルディア、金融大手クレディ・スイスなどがある。profawo外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは家庭と仕事の調和を図る環境づくりをモットーとして1996年に設立されたNPO団体で、スウォッチグループ、スイス連邦鉄道などスイス企業約200社の加盟企業の従業員に対して、保育所、幼稚園、ベビーシッターとのマッチングサービスなどを提供している。

今回のストは、女性に対するセクシャルハラスメントの解消を訴える「Me Too」運動とも無関係ではない。3月8日の国際女性デーには、欧州各地で同様の抗議活動が行われた。

(城倉ふみ、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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