欧州中銀、政策金利据え置きも、さらなる金融緩和措置を検討

(EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2019年07月26日

欧州中央銀行(ECB)は7月25日、フランクフルトで開催された政策理事会後の記者会見で、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)を0.00%、限界貸付ファシリティー金利〔オーバーナイト貸し出し(翌日返済)の金利〕を0.25%、預金ファシリティー金利〔オーバーナイト預け入れ(翌日満期)の金利〕をマイナス0.40%に据え置くと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、政策金利は「少なくとも2020年の上半期中」、かつECBが掲げる物価上昇率の目標値を持続的に達成するまでに必要な期間据え置くとしたが、この期間中に金利をさらに引き下げる可能性にも初めて言及した。債券・国債の購入拡大プログラム(APP:expanded asset purchase programme)の下で購入し、現在保有する債券の満期償還金の再投資については、少なくとも利上げ開始以降まで続ける方針を引き続き確認した。

マリオ・ドラギECB総裁は会見の中で、現在および今後予想される物価上昇率がECBの目指す物価上昇率の水準を下回っているとの現状認識を示し、今後長期にわたる金融政策の緩和姿勢が必要と強調した。また、物価上昇率が目標を上回ることも下回ることもできるとする「対称性へのコミットメント」に触れ、中期のインフレ率が同目標を下回り続ける場合には、今後の物価上昇率の目標値に対する認識を改める可能性も付言した。これに付随し、ドラギ総裁は「(必要な)あらゆる政策手段を講じる用意がある」と強調した上で、政策金利に関するフォワードガイダンスの強化や、準備預金における金利の階層構造方式(異なった金利を適用すること)の導入など民間銀行の負担軽減措置、新たな債券・国債購入プログラムの規模や購入資産の組み合わせの変更といった選択肢の検討を開始したことを明らかにした。

さらに、ドラギ総裁は「地政学的要因や保護主義の脅威、新興市場における脆弱(ぜいじゃく)性などの要素に起因する不確実性の持続は、ユーロ圏の経済の先行きを不安にするとともに、特に製造業の景況感を減退させている」と指摘、「物価上昇圧力は低い水準にとどまり、今後の物価上昇の期待感も減退している」と警戒感を示した。

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(EU、ユーロ圏)

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