ブラジルはG20のタイミングでの合意意義を強調、メルコスールEUのFTA交渉合意

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、EU)

サンパウロ発

2019年07月01日

ブラジル外務省は6月28日、メルコスール・EUの自由貿易協定(FTA)交渉がブリュッセルの閣僚級会合で合意に達したことを発表した。同省プレスリリースによれば、両地域を合わせると世界のGDPの25%、人口7億8,000万の市場となる(表参照)。ブラジル政府は「協定の合意は、緊張、不確実性をはらむ現状の国際通商舞台において、両地域の経済的開放、競争条件の強化に向けた両地域の約束を示すもの」と、G20大阪サミットの最中における合意意義を強調した。閣僚会合には、ブラジルからエルネスト・アラウージョ外相、テレーザ・クリスチーナ農業・畜産・供給相、マルコス・トロイジョ経済省通商国際問題特別局長が参加していた。

同協定は、物品の関税に加えて、サービス、政府調達、貿易円滑化、貿易の技術的障害、衛生植物検疫措置、知的財産といった制度を対象とし、これまでメルコスールが交渉してきた通商協定の中でも、広範囲かつ複雑さをはらんだ内容だったとしている。今回の協定により、ブラジルは全ての工業製品でEU向け輸出関税が低減されるほか、オレンジジュース、果物、インスタントコーヒーなどの農産物の市場アクセスが改善されるとしている。懸案となっていた食肉、砂糖、エタノールなどの品目では、割当による関税低減が見込まれる。一方、EUからの輸入に関しても、国内生産者にとって、より高度な科学技術による原材料・資材へのアクセス改善、価格の低下につながり、ブラジル経済の競争力強化に資するとした。

ブラジル工業連盟(CNI)は、6月28日付プレスリリースで協定合意を歓迎する一方、国内市場の開放に関して、「深い国内改革」の必要性を指摘すると同時に、「重要なのは、変化は漸進的であるものの、国内企業は新たな現実への適合を開始する必要がある」と表明した。「深い国内改革」とは、産業界が直面する高率かつ複雑な税制、硬直的な労働法などいわゆる「ブラジルコスト」の改革を指すとみられる。

G20大阪サミットで訪日したボルソナーロ大統領も、6月29日未明(日本時間)のツイッターで、メルコスールとEUのFTA交渉が合意に達したことを祝福し、「同協定は1999年に交渉開始以降合意に至らなかったものだが、これまでで最も重要な、ブラジル経済に大きな利益をもたらす通商協定になる」としている。

表 メルコスール、EUのGDP、人口(2017年)

(二宮康史)

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、EU)

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