大統領が税制優遇制度の見直し法案の早期成立を表明

(フィリピン)

マニラ発

2019年07月25日

フィリピンのドゥテルテ大統領は7月22日に実施した就任後4回目となる施政方針演説(SONA)において、日系企業など外資系企業への税制優遇制度の見直しを含む、税制改革第2弾の法案「TRABAHO」を早期に成立させる意思をあらためて表明した。

TRABAHO法案は、ASEAN諸国の中で最も高い30%という現在の法人税率を段階的に20%まで引き下げる一方で、日系企業が900社以上登録されているフィリピン経済特区庁(PEZA)を中心とした、経済特区に適用される税優遇措置の縮小や撤廃が盛り込まれており、日系企業に懸念が広がっている(2019年5月20日記事参照)。

TRABAHO法案は2018年9月に下院を通過したが、2018年1月に成立した税制改革第1弾法案「TRAIN」による各種物品税の増税などによって、インフレが加速したことを理由に上院が反対し、2019年6月上旬に閉会した第17次国会会期中には成立しなかった。2019年5月13日に実施された中間選挙において、ドゥテルテ大統領を支持する与党勢力が圧勝したことを受けて、7月22日に始まった第18次国会において早期に成立する見込み、と報道されている。

ドゥテルテ大統領はSONAにおいて、「貧困削減の各種プログラムのための資金調達と、中小零細企業のビジネスチャンス拡大のためにも、TRABAHO法案を早期に可決することを国会に嘆願している」と述べた。

地元の産業界からは、TRABAHO法案に対して懸念の声も出ている。ITビジネスプロセス協会(IBPAP)のレイ・ウンタル社長兼最高経営責任者は地元メディアに対して、「TRABAHO法案が可決されれば、IT-BPO産業全体の市場成長率が35~40%ほどのマイナスになるだろう」と述べた。また、衣料品輸出業者連盟(CONWEP)は、TRABAHO法案の成立によって5万7,600人が失職すると試算している。

フィリピン財務省(DOF)は地元メディアに対して、本来徴収できるはずの毎年3,000億ペソ(約6,300億円、1ペソ=約2.1円)の税金を現行の税制優遇制度によって徴収し損ねている、とコメントした。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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