日本食品のドイツ市場参入、高価格に見合う差別化が重要

(ドイツ、日本)

欧州ロシアCIS課

2019年07月22日

ジェトロは7月9日から12日にかけて、東京、金沢、熊本の3カ所で、ドイツ、フランス、イタリアの日本食品市場を紹介するセミナーを開催した。ジェトロ・ベルリン事務所の西岡宏コーディネーターは、ドイツの消費者は価格に対する感度が高いため、価格に見合う商品の特徴を打ち立てることが重要だと述べた。

ドイツの家計では、住居費が占める割合が3分の1以上になる。食費の割合は比較的小さい。食料品に関して、価格に敏感であることもドイツの消費者の特徴だ。また、環境問題への意識が高く、有機食品が人気で広く浸透している。ただし、広く浸透しているために、価格は抑えられており、有機ではない食品と比べて極端な価格差はないという。ドイツの小売企業が日本から直接輸入することはほとんどなく、輸入卸が介在する。このため、ドイツに輸出する場合、輸送費などに加えて輸入卸のマージンも加わり、日本での販売価格の1.5倍から3倍になることから、別の切り口での商品差別化が必要になる。

ドイツの消費者が1年で消費する肉は59.8キロ(2017年時点)、アルコール飲料は135.5リットル(2015年時点)。ただし、食の多様化により伝統食の消費量は減少傾向にある。魚やコメの消費量は少ない。

小売市場の構造を見ると、ディスカウンターの存在感が強いのがドイツの特徴で、大手4社のシェアが3分の2を占めるなど寡占市場となっている。ドイツ独特の商習慣もあり、外資系が進出しづらい市場でもある。米国のウォルマート、英国のマークス&スペンサーなどが撤退している。

一方、外食への支出は増加傾向にある。特に、地中海料理、エスニック料理が人気を集めており、新しい味を求めるドイツ人消費者が増えていることが推察される。

ドイツ市場の開拓のカギとしては、「地道」「継続」が重要。大きなコストをかけて一気に市場に浸透させようとしてもうまくいかない市場。日本の生産者が直面する課題には、賞味期限(最低でも10カ月~1年)の問題、輸入者からの問い合わせへの迅速な対応、EUの規制の事前確認の欠如などがある。

西岡コーディネーターによると、日EU経済連携協定(EPA)の関税削減効果については、現在のところ、卸売価格に反映されていないケースが多いという。ただ、今後、特恵関税を活用する事業者が増えることで、市場価格にも効果が出てくるだろうとした。

セミナーには、農林水産品、酒造などさまざまな製造業や商社などの幅広い産業分野の参加者が集まった。なお、今後の開催されるセミナーは、ジェトロのウェブサイトで確認できる。

写真 講演する西岡コーディネーター(ジェトロ撮影)

講演する西岡コーディネーター(ジェトロ撮影)

写真 ドイツ市場に関心を持つ食品関係事業者が多く参加(ジェトロ撮影)

ドイツ市場に関心を持つ食品関係事業者が多く参加(ジェトロ撮影)

(福井崇泰)

(ドイツ、日本)

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