ジャパンブルー、日EU・EPAの自己申告制度の利便性を評価

(日本、EU、イタリア、フランス、オランダ、英国)

欧州ロシアCIS課

2019年07月26日

デニムの藍(青)を追求するジャパンブルー(岡山県倉敷市児島)は、伝統の技と最新技術を用い、デニム生地を始めとするテキスタイルから、ジーンズ・藍染め製品まで幅広く生産・販売している。2008年ごろから海外輸出事業に本格的に乗り出し、デニム生地と製品の両方を輸出する。ジェトロは2019年7月17日、同社で欧州向け輸出を担当するCOLLCT事業部営業3部主任の吉田礼一郎氏とEPAの特恵関税手続きを担当する池上あさこ氏に、日EU経済連携協定(EPA)の活用状況について聞いた。

ジャパンブルー・テキスタイル部門の海外輸出は売上高全体の15%程度で、そのうち欧州向けは海外輸出の約40%を占める。製造工場の多いイタリアや取引先本社が立地するオランダなどを中心に、欧州全域に販路を展開し、一層の強化を図っている。デニム生産地としての児島は古くから繊維産業が盛んで、同社のデニム生地や製品はジャパンブランドとして海外からの評価も高い。

同社の吉田氏と池上氏によれば、日EU・EPAが発効した2019年2月から関税撤廃の適用を受けているという。欧州向けのインボイスに、同EPAで規定された原産地に関する申告項目を初めから埋め込むことで、同EPAによる関税撤廃手続きをしやすいかたちに整えている。生産者(サプライヤー)として、輸出者となる商社に供給する場合も、どの原産品認定基準に当てはまるかなども事前に用意し、提供している。イタリア、フランス、オランダで日EU・EPAを利用した通関を2月以降行ってきたが、今のところ特に問題ないという。フォワーダー企業によって、原産地申告を記載したインボイスの原本を求められる場合と、電子媒体でもいい場合など対応の違いがある程度だと説明する。同社製品の原産品認定基準には品目別原産地規則の加工工程基準が当てはまるため、「C3」と記載し、申告している。上記基準を満たせないものについてはその旨、顧客側に説明しているという。

なお、原産性の申告文は同一産品の複数回輸送の場合、最長12カ月、1回の申告でよいことになっている。しかし、EU加盟国側の税関が原産性の申告を記載しないインボイスの場合に、EPA利用申告を判断できるか不安なため(注)、原産性の申告文を毎回記載しているという。

他方、これまで利用経験のあるタイとのEPAと比較して、商工会議所での特定原産地証明書を取得する手続きの手間が不要になった点がメリットとして一番大きいという。原産性証明書類の準備もそれほど負担ではないとしている。同社の事例は、自己申告制度のメリットと日EU・EPAの活用が容易なことを示す好事例といえそうだ。

日EU・EPAを機会に新規顧客を開拓へ

また、例えばデニム生地のEU側関税率は8%で、日EU・EPAでは発効と同時に無税となったため、その節税効果は大きいが、販売契約が商品の工場渡し(EXW)価額であるため、関税節約額は全て販売先のメリットになるという。しかし、欧州側の顧客は日EU・EPAの利用を意識しているため、ジャパンブルーの価格競争力の向上に寄与しており、販路拡大の追い風になると捉えている。既存市場を維持しながら、この機会に新規顧客を拡大していきたいとの考えだ。新たに、英国向けの輸出にも取り組み始めている。そのため、英国がEUから合意なく離脱すると、日EU・EPAの適用対象外となるため、その動向を注視している。また、米国向けにも今後、EPAが締結され、関税削減のメリットを受けられるようになることを期待しているという。

写真 アムステルダム・キングピン展への出展(ジャパンブルー提供)

アムステルダム・キングピン展への出展(ジャパンブルー提供)

(注)欧州委員会の説明によれば、EU輸入時の通関申告書に、同一産品の複数回申告であることを示すコード「U111」などを記載することにより、EU加盟国税関は判断できるとしている。

(田中晋)

(日本、EU、イタリア、フランス、オランダ、英国)

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