ヘルシンキ市はデジタル化で予防の公的サービス充実化、都内でセミナー

(フィンランド)

欧州ロシアCIS課

2019年07月04日

フィンランドのビジネス促進機関であるビジネスフィンランドと、在日フィンランド大使館、ジェトロは6月27日、都内で「ヘルシンキ市のデジタル戦略、データへの取り組み」セミナーを開催した。

ペッカ・オルパナ大使のあいさつに続き、首都ヘルシンキ市でサービスのデジタル化を推進するミッコ・ルサマ・チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)が取り組みを紹介した。特に強調したのは、サービスのデジタル化により可能となる予測、予防など事前対処型のサービスの充実化で、成功事例として、子宮頸がん検診を挙げた。ヘルシンキでは、30~60歳の女性は5年ごとに自動的に検診の知らせを受ける。検診日の予約はオンラインまたは電話で手軽に変更できる。検診制度の導入によりがんの早期発見や予防が可能となり、市民の健康増進のみならず、医療費の削減にも大きく貢献しているという。また、デジタル化によるサービスの自動化により、サービス提供の漏れを防止し、かつ、自動化によって浮いた人手をより人間の手を介すべきサービスに割くことが可能となり、サービス全体の向上につながっているという。

このほかにも、保育園への入園案内や青少年の社会的孤立の予防のためのサービスなどもデジタル化による自動化、効率化を目指している。

ルサマCDOは、デジタル化に必須となるデータの取り扱いに関し、そのデータが帰属する市民の主権を尊重する重要性にも触れ、各市民が自分のデータがどのように使用されるかが通知され、管理できる原則を尊重すべきとした。個人のデータ保護とデータの利活用が必要となるデジタル化促進は通常、矛盾する。これを整合し、デジタル化を促進するためには、データ利用の目的とその処理方法を透明化することが必要不可欠だとした。

こうしたサービスのデジタル化においては、情報通信分野でのインフラやシステム整備が必要不可欠だ。日本企業がこういうプロジェクトに参画している事例もあり、サービスのデジタル化先進市場としても注目を集めている。加えて、人口60万人と小規模なヘルシンキは、より大きな市場に展開する前の実証の場としても有用だとルサマCDOは指摘した。

写真 講演するルサマCDO(ジェトロ撮影)

講演するルサマCDO(ジェトロ撮影)

写真 セミナーは在日フィンランド大使館で行われた(ジェトロ撮影)

セミナーは在日フィンランド大使館で行われた(ジェトロ撮影)

(福井崇泰)

(フィンランド)

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