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トランプ米大統領、ウラン輸入が安保上の脅威との商務省判断を受け入れず

(米国)

ニューヨーク発

2019年07月17日

トランプ米大統領は7月12日、ロス商務長官がウランと同関連製品の輸入が米国の安全保障上の脅威だと判断した1962年通商拡大法232条に基づく調査報告書の内容について、現時点では同意しないとの声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。一方で、トランプ大統領は、報告書が指摘する重大な懸念には同意するとして、大統領の国家安全保障補佐官と経済政策補佐官に対し、米国核燃料作業部会を立ち上げて、国内の核燃料のサプライチェーンに関する包括的な安全保障上の分析を行うことを指示した。作業部会は90日以内に、分析を踏まえた提言内容を報告する。

政権発足後、232条調査に基づく安保上の脅威を初めて否定

米国商務省はトランプ政権発足以降、ウラン製品のほか、鉄鋼・アルミ製品、自動車・同部品、チタンスポンジの輸入に関して、232条に基づく調査を行ってきた(表1参照)。現在も調査中のチタンスポンジを除いて、トランプ大統領はこれまで報告を受けた全ての案件に対し、安全保障上の脅威があると認定してきた。今回は商務省の報告内容を受け入れなかった初の案件となる。

表1 トランプ政権による通商拡大法232条の発動状況

国内需要の9割以上を輸入に依存

商務省が大統領に提出した報告書(現時点で非公開)によると、米国は現在、ウランの国内需要の約93%を輸入に依存しており、その割合は2009年の85.8%から拡大している。商務省は、外国の国有企業による過剰供給が市場価格をゆがめて米国企業による競争を困難にしたことが主因と分析している。

表2 米国のウラン製品の輸入元上位10カ国

ジョン・バラッソ上院環境・公共事業委員長(共和党、ワイオミング州)は7月13日、大統領の判断に対して、「米国はウランの供給に関して、ウラジーミル・プーチン・ロシア大統領とその衛星国に依存してはならない。それは危険で受容できないことだ」とする声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。今回の232条調査を申請した米国のウラン生産企業のウル・エナジーとエナジー・フュエルの2社は同日、合同のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「トランプ大統領が米国のウラン産業が直面する厳しい状況を認識したことを評価する」として、新設される作業部会を支援するとした。

原発事業者はかねてウランの輸入制限に反対

他方、米国内の原子力発電事業者で構成する業界団体アドホック・ユーティリティ-ズ・グループは232条の調査開始時点から、ウランの輸入制限に反対の立場を示してきた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。ウラン輸入が制限された場合、発電コストの上昇を招き、多くの原発が閉鎖に追い込まれ、トランプ大統領が取り組んできた原発産業の救済という方針にも矛盾するとしている。米国のエネルギー事情に詳しい戦略国際問題研究所(CSIS)のジェーン・ナカノ上席研究員はジェトロのインタビューに対し、「今回の判断は、いかに米国の原子力発電業界がウランの輸入に依存しているかを反映している。何らかの輸入制限措置が取られた場合、原発の燃料費は高騰し、原発業界は苦境に置かれる。さらには雇用喪失にもつながる可能性も指摘されている。かつ、ペンシルベニアなど特に影響を受ける州は、大統領の再選にとって重要な激戦州だ」と、大統領の判断の背景を分析した。

(磯部真一)

(米国)

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