ジョンソン英首相、内政では医療、治安、教育などに重点

(英国)

ロンドン発

2019年07月26日

ボリス・ジョンソン英国首相は7月25日午前、初の閣議を開催。昼前には首相として初めて議会で演説した。

ジョンソン首相は演説の中で、英国のEU離脱(ブレグジット)を10月31日までに実現する決意を重ねて強調。EUに対しては「離脱協定に変更を加えることを一切受け付けない姿勢を再考するよう期待する」と述べた。EUがこれを拒否すれば、合意なき離脱(ノー・ディール)を選択するとし、離脱期限までにその準備を最大限加速させると力説した。

ブレグジット以外の政策課題については、医療、治安、インフラ整備などを重視する姿勢をにじませた。演説で言及した主な方針は次のとおり。

  • 国営医療サービス(NHS)の予算拡大。20の病院で施設改修を実施。かかりつけ医師(GP)の診察待ち時間の短縮。
  • 路上一般犯罪の抑制。2022年までに警察官2万人を増員。職務質問権限の拡大。
  • 初等・中等教育機関における児童・生徒に係る予算の引き上げ。今国会閉会までに教育費支出を過去の水準まで増加。
  • 全国の地方自治体への支援強化。各地における機会不平等の是正。
  • 道路、鉄道、光ファイバー、第5世代移動通信システム(5G)、住宅など社会インフラの整備。
  • 移民諮問委員会(MAC)によるオーストラリア型ポイント制移民政策の検証。
  • (メイ前政権が発表した)2050年までの温室効果ガス(GHG)純排出ゼロ実現に向けた政策の推進。蓄電池技術開発などによる電気自動車(EV)産業や航空機産業の集積強化。
  • バイオ産業、衛星や地球観測システムなどの強化。
  • 全国各地で自由貿易港(特区)を設置。通商交渉を加速。

演説では触れなかったが、ジョンソン首相は保守党の党首選を通じ、個人への減税にも取り組む姿勢を明言してきた。英国では年収5万ポンド(約675万円、1ポンド=約135円)以上の所得がある居住者は40%の最高税率が適用されるが、これを8万ポンドに引き上げると約束。社会保険料の支払いが免除される所得基準も引き上げる方針を打ち出していた。

しかし、英国のシンクタンク、財政研究所の試算によると、政府はこれらの減税策を実現すれば、社会保険料免除の基準の引き上げ幅に応じて年間120億ポンドから200億ポンド超の歳入を失うことになる。減税をうたう一方で、演説で述べたような積極財政を伴う政策を打ち出していることについて、実行を疑問視する声も聞こえている。ロンドン市長時代に見せた行政手腕を発揮できるか、注目が集まる。

(宮崎拓)

(英国)

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