シェンクワン県のジャール平原巨大石壺群が世界文化遺産へ登録

(ラオス)

ビエンチャン発

2019年07月29日

ユネスコの第43回世界遺産委員会は7月6日、ラオス北部にあるシェンクワン県のジャール平原巨大石壺群(Megalithic Jar Sites in Xiengkhuang-Plain of Jars)を世界文化遺産に登録することを決定した。ラオス政府は1998年から5度にわたる世界遺産登録の交渉を重ねていた。ラオスの世界文化遺産登録は、1995年の古都ルアンパバン市、2001年のクメール寺院遺跡ワットプーに続き3カ所目となる。ラオス経済に重要な地位を占めている観光産業への好影響が期待される。

ジャール平原には2,100個以上の円筒状の巨大石壺が確認されており、主に紀元前500年ごろから西暦500年までの鉄器時代の埋葬などに使用されたとみられている。高さ1~3メートルの大部分の石壺は砂岩を削って製造されている。今回登録されたのは11カ所、15グループで面積は173.56ヘクタールだ。また、保護用の緩衝区は1,012.94ヘクタールと設定された。考古学的に重要な1,325個の巨大石壺と石皿、作業場、埋葬品などで構成される。

写真 ジャール平原の石壺(ジェトロ撮影)

ジャール平原の石壺(ジェトロ撮影)

ラオス政府は今回のジャール平原の世界遺産登録を契機に観光促進を期待している。シェンクワン県には、石壺のある広大なジャール平原の景観や、温泉や寺院、また雨季にはマツタケを食べられるなど観光資源が豊かだ。

2018年のラオス観光統計によると418万6,000人の外国人観光客がラオスを訪問した。しかし、シェンクワン県を訪問したのは1.8%の7万7,000人にとどまっている。これは認知度の低さに加えて、空路では首都ビエンチャンのみの接続で1日1便(30分)、車ではビエンチャンから北へ約400キロ(約8時間)、ルアンパバンから東へ260キロ(約6時間)とアクセスの困難さによるものとみられる。

今回の登録により早速、日本でも世界遺産観光と冠したツアーの販売が開始されている。今後、世界遺産としての認知度の向上とともに交通アクセスの改善が進めば、より観光客を誘致することができると見込まれる。

なお、ラオス政府は引き続き、ラオスの桂林とも称される中部カムアン県にある石灰岩山地ヒンナムノー地区の世界自然遺産登録を準備している。

(山田健一郎)

(ラオス)

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