トランプ米大統領、USTRにWTOでの「途上国」ルール変更に向けた取り組みを指示

(米国)

ニューヨーク発

2019年07月30日

トランプ大統領は7月26日、ツイッターを通じて、「世界でも最も裕福な国々が、自国を『途上国』(注)と称してWTOのルールを免れ、特別扱いを受けている状況にあり、WTOは崩壊している」とし、米国通商代表部(USTR)に対して行動を取るよう覚書に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ロバート・ライトハイザーUSTR代表はこれを受けて、「WTOにおいて公平性と説明責任を求める大統領のリーダーシップを称賛するとともに、大統領の指示を実行していく」と表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

トランプ大統領はUSTRへの覚書の中で、各国・地域の経済力をより反映しているとされる購買力平価ベースでの1人当たりGDPをみたときに、世界で最も裕福な10の国・地域のうち7つ、すなわち「ブルネイ、香港、クウェート、マカオ、カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦」が「途上国」だと主張していると指摘するとともに、G20とOECDの両方に加盟している「メキシコ、韓国、トルコ」も同様だとしている。トランプ大統領は、WTO加盟国・地域(現在は164カ国・地域)の約3分の2が、自国・地域が「途上国」に当たると主張して、WTOの枠組みの中で特別な待遇を利用し、十分な関与をしていないと指摘した。これらの国は、他の先進国のみでなく、真に特別な待遇が必要な国に損害を与えるとし、その最たる存在として中国を名指ししている。

トランプ大統領はその上で、米国は貿易を自由で公正かつ相互主義的にするため、必要な資源を全て投じて、WTOによる「途上国」に対するアプローチを変えていくとしている。具体的には、WTOにおいて経済的に裕福な国が「途上国」と称することによる特別扱いを受けられなくなるよう、あらゆる手段を取ることをUSTRに指示した。また、覚書の日付から60日以内に取り組みの進捗を報告するよう指示するとともに、USTRが覚書から90日以内に進展がないと判断した場合、USTRは、(1)「途上国」であることが不適当と判断するWTO加盟国・地域を今後「途上国」として扱わないこととし、(2)かつ該当する場合は、それら国・地域のOECD加盟権を支持しない、としている。さらに、USTRが、「途上国」であることが不適当と判断する国・地域のリストを公表するよう指示している。

WTOは、貿易を通じて途上国の発展を促す観点から、途上国に対しては協定のルールを一律に適用するのではなく、「特別かつ異なる待遇(S&D)」を認めている。現在、WTO協定内のそれぞれの分野に含まれるS&Dにかかる条項は150超に上るが、WTOはその役割を大きく5つに分類している(表参照)。

表 WTO協定における「特別かつ異なる待遇(S&D)」の主な内容と具体例

(注)WTOでは「途上国」に関する定義はなく、加盟国自らの申告ベースとなるが、他の加盟国はその主張に異議を唱えることができる。WTOの解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(磯部真一)

(米国)

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