デジタル課税、2019年政府予算に組み込まれるも未施行

(イタリア)

ミラノ発

2019年06月05日

イタリアでは、国の海外ビジネス促進機関であるイタリア貿易振興会(ICE)を通じて各国のアマゾンと協力し、海外売上高の少ない企業を対象とした越境EC活動を支援するなど、中小企業の海外向けデジタルマーケティング・販売支援を実施している。

一方、国内におけるデジタルサービスへの課税については、既に数年ほど議論がされており、パオロ・ジェンティローニ前政権時代に制定された2018年予算法には具体的な課税方針も定められていたが、最終的に施行されなかった。この課税方針は政権交代後のコンテ現政権下でも継続しており、2019年予算法においては、2018年予算法で定められていた規定を実質的に無効とした上で、新たな課税枠組みを決定した。欧州委員会が提案していた内容に沿ったもので、企業間または企業対消費者間の取引において提供される特定のデジタルサービスから生じる収益に対して3%の税率を適用し、イタリアと世界の双方である一定以上の売り上げを上げる企業が課税対象となる。

ただし、本税は2019年5月30日現在、導入されていない。2019年予算法で定められたスケジュールでは、導入に必要とされる施行令が2019年4月30日までに出され、その60日後以降に発効と定められているが、現状で施行令が出されていない状況だ。

デジタルサービスへの課税については、一部業界団体から反発や課税ルールの策定に関する声明が出されている。イタリアのeコマース業者による業界団体のネットコム協会は声明で、欧州域内での調和がされていない独立した課税への反対や、売上高ではない利益ベースの課税とすること、業界への悪影響を最大限抑制した税制度設計とすることなどを要求している。また、デジタル課税は全業種を対象とするべきではなく、イタリアでの租税回避的なスキームをとる企業や、他者の著作物に依拠したサービスを提供する業者のみに課されるべきだなどの反発もみられる。

また、2019年予算に定められたデジタルサービス課税が実現していないことにより、年間6億ユーロ程度の税収減となることを指摘する向きもある。

(山内正史)

(イタリア)

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