蘇寧易購がカルフール中国を買収、進むオンラインと実店舗の融合

(中国)

中国北アジア課

2019年06月28日

中国家電販売大手の蘇寧易購は6月23日、フランス流通大手カルフールの中国法人(以下、カルフール中国)を買収すると発表した。蘇寧易購は、48億元(約768億円、1元=約16円)でカルフール中国の株式80%を取得する。

カルフール中国は、国内22省51都市に210店の大型総合スーパーマーケットと24店のコンビニエンスストア、6つの大型倉庫・配送センターを有する。

蘇寧易購は、カルフール買収を通じ、実店舗の獲得によるオンラインとの融合を強化し、スマートリテールを推進するほか、日用消費財の取り扱い拡充、調達および物流コストの削減が期待できるとしている。

カルフール中国は、1995年に中国に進出。翌年に進出した米国ウォルマートとともに、中国で初めて欧米の「ハイパーマート」業態を展開。大量調達・低価格販売の手法を持ち込み「小売王」と呼ばれ一時代を築いたが、近年は経営不振が続いていた。2018年決算では、5億7,800円万元の最終赤字を計上した。苦戦の大きな理由には、台頭するネット販売への対応が出遅れ、十分な対応策を打ち出せなかったことが挙げられる。

一方、蘇寧易購は、家電の実店舗販売から、オンラインを融合する経営モデルへのシフトを成功させており、カルフール中国とは明暗を分けるかたちとなっている。蘇寧易購の前身である蘇寧電器は、家電量販店として成長し、2009年には地場系の国美電器を抜いて、国内トップに躍り出た。他方で、翌2010年にはEC(電子商取引)サイト蘇寧易購を立ち上げ、物流業務、金融業務の強化、融合を図りながら「O2O(online to offline)」マーケティングを推進してきた。現在では、強みである家電分野にとどまらず、食品、衣類、ベビー用品など取り扱い分野を充実させながら、中国4位のECサイトに成長している。

小売り各社にとって、オンラインとの融合は、生き残りをかけた最重要課題の1つとなっている。また、ECサイト各社も、熾烈(しれつ)な競争の中で、各分野の実店舗との融合を急いでいる。直近でも、中国ネット通販最大手のアリババ集団が、2018年2月の中国家具大手の居然之家への出資に続き、2019年5月にも中国家具大手の紅星美凱龍に出資するなど、活発な動きがみられる。業界関係者は「今回の買収により、テンセント、アリババ、蘇寧の対決はさらに激化する」と指摘している(「中国経営報」6月24日)。

(小林伶)

(中国)

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