ゼネスト決行で960億円相当の経済損失が発生

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年06月04日

アルゼンチン国内では5月29日、労働組合をとりまとめる労働総同盟(CGT)を中心にしたゼネストが行われ、公共交通機関が運行を取りやめるなど市民生活に影響が及んだ。空港や港湾などが滞ることで経済活動にも影響が生じ、ニコラス・ドゥホブネ経済相は今回のゼネストによって400億ペソ(約960億円、1ペソ=約2.4円)相当の経済損失が発生したと述べた。

今回のゼネストは、2015年12月にマウリシオ・マクリ大統領が就任してから5回目となった。地下鉄や鉄道、バスといった交通機関が止まった。また、国営のアルゼンチン航空も約330便のフライトをキャンセルしたために、4万人近くの利用者に影響を与えた。

今回は、2018年以降の景気後退に対する抗議の目的で実施された。2004年から2016年にかけてCGT事務局長を務め、今もトラック労働組合事務局長として左派勢力にも影響力を有するウーゴ・モジャノ氏は記者会見で、今回のゼネストが市民の求めによるもので、雇用やインフレなどの現政権による政策への拒否が示されていることを強調した。

なお、ダンテ・シカ工業・生産労働相は、今回のゼネストが本来の目的よりも、政治的思惑を帯びたものと発言。10月の大統領選挙を控えて、与野党勢力が大統領候補の絞り込みを図る中、CGTが与党批判のために今回のゼネストを後押ししたことをにおわせた。なお、ブエノスアイレス市商工連盟(FECOBA)の発表によれば、今回のゼネストでも約8割の商店は開店していたという。約3年半のマクリ政権において、労働組合による締め付けが弱まっていることを示している。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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