中米統合開発計画に基づくエルサルバドル支援を開始
(メキシコ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス)
メキシコ発
2019年06月25日
メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は6月20日、南部チアパス州タパチュラ市で、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領とともに、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の協力を得て、メキシコと中米北部3カ国(グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル)が策定した中米統合開発計画に基づく協力事業の開始を発表した。メキシコ政府が3,000万ドルをエルサルバドルに提供し、同国で貧困層による植林事業などを行う。同様の援助をグアテマラやホンジュラスにも提供するため、3カ国に対する資金援助は合計1億ドルに達する見込み。
植林事業は、AMLO政権下でメキシコ国内貧困地域において展開されている「命を植える(Sembrando Vida)」プログラムをモデルとしたものだ。メキシコでは、2.5ヘクタールの土地を所有する、あるいは耕作権を持つ農村地域貧困ラインの月収約2,000ペソ(約1万1,200円、1ペソ=約5.6円)以下の成人に対し、月額5,000ペソの補助金を支給し、果樹や木材用樹木などの植林を支援している。エルサルバドルでは、5万ヘクタールで同様の事業が展開され、2万人の雇用が生まれるという。
対米不法移民抑制の観点から中米を支援
中米統合開発計画は、AMLO大統領が就任した2018年12月1日に、4カ国の大統領あるいは副大統領による計画策定の宣言がなされ、ECLACの協力を得て策定し、5月20日に内容が発表された。この計画には、国連の下部機関を中心に17の国際機関が支援を表明しており、AMLO大統領の発言によると、米国政府も協力する意向を示している。(1)経済開発、(2)社会福祉、(3)環境保護、(4)移民対策、の4つの柱から成り、(1)の中には、メキシコと中米の電力系統統合に関する合計4億5,000万ドルのプロジェクトや、約950キロにおよぶメキシコとグアテマラの国境インフラや周辺開発などが盛り込まれている。
同計画には、メキシコ南部貧困地域と中米北部3カ国の開発を推進することにより、経済的な理由による対米移民の流れを抑制する狙いがある。メキシコ政府は、米国による関税措置を回避するために、国家警備隊や連邦警察を導入して中米などから流入する不法移民取り締まり強化を実施しているが、中米統合開発計画は中長期的な視点で移民の原因を排除する現政権の重点政策となっており、低成長下で歳入が厳しく、大幅な歳出抑制を強いられている中でも中米諸国に無償資金を提供している。
(中畑貴雄)
(メキシコ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス)
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