拡大するロシアEC市場、ロシア企業に聞く

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月11日

インターネット取引業協会(AKIT)が6月3日に発表したレポートによると、2018年のロシアのオンライン販売売上高は、前年比59%増の1兆6,600億ルーブル(約2兆8,220億円、1ルーブル=約1.7円)となった。このレポートは、2019年末までにオンライン販売は2兆2,000億ルーブルになると予測している。オンライン販売・電子商取引(EC)市場のさらなる拡大が見込まれる中、ロシア企業もさまざまな取り組みを進めている。市場視察のため来日したロシア企業2社に自社のEC事業について聞いた(6月3日)。

話を聞いたのは、「フィットネストレード外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」のアナトリー・ワリシニコフ社長と、「ビオスティムル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」のイーゴリ・ビテシェフ社長。フィットネストレードは、フィットネスクラブやジム用のマシンを取り扱う極東最大のオンラインストアで、6年以上にわたりロシア・CIS地域向けに世界各国のフィットネスマシンを供給している。ビオスティムルは、1991年の設立以来、地元アルタイ共和国の天然素材を生かしたサプリメントなどの健康食品を製造、薬局や健康食品専門店、オンラインでの販売を行っている。

写真 左:フィットネストレードのアナトリー・ワリシニコフ社長、右:ビオスティムルのイーゴリ・ビテシェフ社長(ジェトロ撮影)

左:フィットネストレードのアナトリー・ワリシニコフ社長、右:ビオスティムルのイーゴリ・ビテシェフ社長(ジェトロ撮影)

ECによる売り上げは、2社ともまだ全体の5%程度ながら、年々増加しているという。フィットネストレードは取扱商品の多くが高価で専門性が高く、顧客は個人ではなくフィットネスジムなどが中心。そのため、インターネット上の情報だけで購入する顧客は少なく、多くの場合インターネット経由で最初のコンタクトをした後、電話やメールのやり取りを経て、実際に商品を試用してから購入に至る。そのような顧客も含めると、インターネット経由の取引の割合は90%に上る。今後のオンライン販売への取り組みについて、ワリシニコフ氏は「インターネット上だけの取引は売る側としても不安があるため、インターネットに加えて電話やメール、対面を含んだ販売を進めていきたい」としている。

ビオスティムルは、オンライン販売の増加を受け自社ホームページを刷新するなど、インターネットの活用をより重視した対応を進めている。社員のITリテラシー強化に向けた研修を行っているほか、オンライン販売専門の部署を立ち上げる予定もある。ロシアのみならず、カザフスタン、ドイツ、スロベニア、中国、韓国、モンゴルなどに向けたオンライン販売の実績もある。欧州は植物由来、アジアは動物由来の製品の売れ行きが良いため、国・地域ごとの需要に応じた販売を行っている。ビテシェフ氏は「(将来的には)日本に合った製品をカスタマイズして販売したい」と、日本とのビジネスにも意欲を示した。

(加峯あゆみ)

(ロシア)

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