経済省が貿易手続きの簡素化に着手

(メキシコ)

メキシコ発

2019年06月10日

メキシコ経済省は6月3日、年間延べ70万件に及ぶ貿易関連の行政手続きの75%について簡素化する措置の開始を発表した。行政手続きに携わる官僚の数を減らし、歳出を削減する目的がある。連邦政府省庁内でさらなる緊縮政策の採用を求めた5月3日付の大統領覚書に経済省として応えた措置だ。今回の発表は簡素化措置の第1弾であり、今後も新たな簡素化を導入していくとしている。

簡素化措置の具体的な内容は、(1)承認期間の短縮、(2)証明書・許可証などの受領場所の柔軟化、(3)E-mailによる申請や承認通知の導入、の主に3種類に分かれる。

例えば、(1)については、鉄鋼を輸入する際に必要な輸入自動通知の承認期間短縮(3営業日→2営業日)、繊維・履物を輸入する際に必要な輸入自動許可の承認期間短縮(5営業日→3営業日)、輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX)や産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)に関する申請承認期間の短縮(手続きに応じてそれぞれ20営業日→15営業日、15営業日→10営業日など)などがある。

(2)では、書類の実物を受領する必要がある手続きの場合、経済省の地方支部で48~72時間後に受領する代わりに、メキシコ市の経済省貿易局(DGCE)で24時間後に受領する選択肢が与えられる。

(3)は、輸出管理(トマトや武器輸出規制関連品目)やIMMEX、PROSECに関する手続きの多くに、E-mailによる申請と承認通知制度を導入した。各手続別の具体的な簡素化内容については、国家貿易情報システム(SNICE)のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。

地方支部の人員を大幅に削減

今回の簡素化措置のうち、承認期間の短縮については、法律や政令、省令などの法規を改正するのではなく、経済省の内規として定められている期間を短縮する内容のため、一種の努力目標と見なされ、法的拘束力はない。簡素化措置は、民間事業者の利便性向上が目的というよりも、現政権の緊縮策の下で歳出をより一層減らすため、手続きの電子化などにより工数を極力減らし、経済省本省への作業の集中により、地方の人員整理を進めて人件費を抑制する狙いがあるとみられる。

貿易関連の専門コンサルティング会社AJRは5月30日付メール配信の中で、経済省の各地方支部で働く多くの職員が5月31日をもって退職するという事実を伝え、IMMEX、PROSEC、原産地証明書の発給手続きなどに混乱が起きることを警告していた。今回の簡素化措置は、その影響を緩和する目的があるとみられる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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