UNCTAD、2018年の世界の対内直接投資は1割減と発表

(世界)

国際経済課

2019年06月14日

国連貿易開発会議(UNCTAD)が6月12日に発表した「世界投資報告2019」によると、2018年の世界の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比13.4%減の1兆2,972億ドルだった(表参照)。世界の対内直接投資は2015年にピークの2兆ドルに達した後、3年続けての減少となった。

2018年に1割強減少したのは、EUを中心に先進国の減少によるところが大きい。先進国の対内直接投資額は26.7%減の5,569億ドルとなり、世界全体の減少に対する寄与度はマイナス13.5ポイントに及んだ。2004年以来14年ぶりの低水準だ。

一方、新興・途上国の対内直接投資額は、中国、ASEANなどアジアが堅調だったことから、0.3%増の7,403億ドルと、わずかながらプラスの伸びを維持した。先進国の大幅減少により、世界の対内直接投資に占める新興・途上国の割合は過去最高の57.1%に達した。

主要国・地域別にみると、EUの対内直接投資額は18.5%減の2,776億ドルに急減した。2018年に米国で大型の税制改革が行われ、米国企業が在欧州関連法人をはじめ海外に保有する利益の本国還流を進展させた影響が指摘できる。米国も9.2%減の2,518億ドルとなった。ただ、世界最大の投資受け入れ国としての地位は13年連続で維持した。

新興・途上国では、中国が3.7%増の1,390億ドルとなり、前年に続き米国に次いで世界2位の直接投資受け入れ国となった。中国以外では、ASEAN向けが3.1%増の1,486億ドルと底堅さを示した。シンガポールやインドネシアなど主要国に対する大型M&Aや域内企業による投資が増加した。

2019年の世界の直接投資について、UNCTADでは、上述した米税制改革の影響が薄れるほか、2018年に公表された世界の対外グリーンフィールド投資総額が前年比4割増となったことなどから、前年比10%増の1兆5,000億ドルと、回復に向かうと予測する。ただ、世界の直接投資の拡大基調は依然として弱く、激しさを増す貿易摩擦が今後の成長の下押しリスクになるとしている。

表 2018年の主要国・地域の対内直接投資(ネット、フロー)

(米山洋)

(世界)

ビジネス短信 bfc3fa85f86963b0