総選挙で野党・社会民主党が第1党維持し政権交代も、極右党は敗北

(デンマーク、EU)

デュッセルドルフ発

2019年06月06日

任期満了(2015年6月25日記事参照)によるデンマークの議会総選挙(一院制、定数179)が6月5日に行われた。ラース・ルッケ・ラスムセン首相率いる中道右派の自由党は議席を伸ばしたが、連立与党が伸び悩む一方で、左派政党が議席を増やしたため、中道左派の野党・社会民主党を軸にした政権が誕生する見通しとなった。極右ポピュリスト政党デンマーク国民党は大幅に減らした。投票率は前回(85.9%)より若干低い84.5%だった。

自由党健闘も、左派政党躍進

社会民主党は得票率では前回を0.4ポイント下回ったものの、2議席増の48議席で議会第1党の座を維持した(表参照)。自由党が9議席増の43議席でそれに続いた。前回、議席を22から37まで伸ばして躍進したデンマーク国民党は21議席減の16議席にとどまる見込み。自由党と連立政権を組む保守党は6議席増の12議席だが、自由同盟は9議席減の4議席になった。左派政党では、社会自由党が8議席増の16議席、社会人民党が7議席増の14議席と伸ばした。単独過半数を得た政党はなく、最大議席を獲得した社会民主党を軸に連立交渉が始まる見込み。社会民主党、社会自由党、社会人民党、赤緑連合の左派4党連立の可能性があるが、社会民主党は左派としては異例の厳格な移民・難民制限を政策として打ち出しており、他の左派政党とこの点で対立を深めている。このため、社会民主党と自由党の大連立の可能性もある。左派4党連立、あるいは大連立でともに91議席となり、議会の過半数に達する。いずれの場合でも、社会民主党のメッテ・フレデリクセン氏が首相となる見込み。

表 デンマーク総選挙議席数見通し

経済政策や環境問題が焦点

総選挙の主な争点は、経済、社会福祉、移民、環境問題だった。子育て支援や保育士の給与向上など社会福祉拡充策が社会民主党やデンマーク国民党から挙げられる一方で、自由党はこれ以上の賃金コスト増加は考えられないと慎重な姿勢を見せていた。

5月26日にデンマークで実施された欧州議会選挙では、自由党が得票率を前回(2014年)の16.70%から23.50%に伸ばした一方で、デンマーク国民党は前回(26.6%)の半分を下回る10.76%で予想外の敗北を喫した。今回選挙での自由党の健闘とデンマーク国民党の敗北は、欧州議会選挙の流れを受けているものとも言えよう。

(安岡美佳、木場亮)

(デンマーク、EU)

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