行政手続きの電子化を進めるエストニア、東京で関連イベントも開催

(エストニア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月20日

6月8、9日につくば市で開かれたG20貿易・デジタル経済相会合に合わせ、エストニアからユリ・ラタス首相をはじめ政府関係者が相次いで来日した。エストニアは特に、デジタル経済で先進的な取り組みを進めているため、招待を受けて、その取り組みを紹介した。

エストニア政府は、「デジタルID」「データ共有」「データへのアクセス」の3つに焦点を当て、行政手続きの電子化を進めてきた。デジタルIDの分野では、同国は2002年にIDカードの交付を開始した。98%の国民が利用するIDカードは、身分証明書や保険証としてだけではなく、電子投票や自身の医療・処方箋情報への照会、税務申告など生活のさまざまな場面に使用できる。特に、オンラインで署名ができるデジタル署名機能は、1年当たり5日分の労働時間を短縮する効果があるという。2017年には、SIMカードを含まない携帯端末を用いて、同様のサービスが利用できるスマートIDも導入されている。

また、行政機関同士のデータ共有を加速させるために、同国は「エックスロード(X-Road)」という情報システムを確立した。このシステムの下では、行政手続きに必要な市民のデータなどを一元管理し、2度以上同じ情報を要求しない「ワンスオンリー」の原則を実現している。

6月13日には、東京都内で、エストニアの電子政府に関するイベントが開催された。約600人の来場者が集まる中、エストニア政府関係者が同国の電子政府の仕組みについて説明した。日本でも行政のデジタル化が進められているが、エストニアでは政策的な要因よりも銀行取引などがきっかけとなり、国民のデジタル化が進んだことが紹介された。一方で、オンラインでの行政手続きなどの普及には時間を要するとし、そうした政策を長期的に進める政治的な意思が重要だとした。また同イベントでは、エストニアの経験をただ学ぶだけではなく、日本の行政機関・民間企業は具体的な結果を出す段階にきているとする声も聞かれた。

なおジェトロは、オープンイノベーションに積極的な日本企業で構成されるミッションを、エストニアを含む北欧・バルト3国地域に派遣することを予定している。本ミッションについての問い合わせには、担当のイノベーション促進課(メールアドレス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で対応している。

(山田広樹)

(エストニア)

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