オランダ環境相、循環型経済実現への道を語る

(オランダ、日本)

欧州ロシアCIS課

2019年06月20日

G20エネルギー・環境相会合(6月15~16日)へ参加のために来日した、オランダのスティンチェ・ファン・フェルトホーフェン環境相を迎え、慶應義塾大学で6月14日に「『資源循環型経済』への躍進」と題したパネルディスカッションが開催された。

ファン・フェルトホーフェン氏は基調講演で、2050年の世界人口が100億人に達し、その維持のために地球3個分の資源量が必要となることが予測され、地球環境維持のためには循環型経済の確立が必須だとし、オランダ政府は2030年までに利用する資源を50%削減し、2050年には利用する資源を100%リサイクルすることを目標に、経済界とも対話しながら取り組みを進めている、と述べた。その一例として、政府が企業や環境団体と協議し、2025年までにプラスチック製品・プラスチック包装物を100%再利用可能とすることを目標とした協定「Plastic Pact」を締結したことを紹介した。同氏は政府の取り組みとして、再利用可能な建材を使ったインフラストラクチャーの建設を行っていること、軍服をリサイクルした素材で軍服を製造して利用していることなども紹介した。また、同氏は、オランダ企業の取り組みとして、フィリップスが医療機器のリサイクルに取り組んでいること、DSMが100%リサイクル可能なカーペットを開発したことを紹介し、製品をどう再利用するかは、設計・製造段階から考える必要があるとデザインの重要性を指摘した。

パネリストとして、環境省の松澤裕大臣官房審議官が日本の資源リサイクル・循環型社会形成へ向けての取り組みや、海洋プラスチックごみ対策の取り組みについて紹介した。地球環境戦略研究機関の武内和彦理事長は、社会と環境、経済は密接につながっており、循環型社会実現のためには統合的な対策が必要で、地域レベルでの取り組みと国際的な協力が重要と述べた。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授は、ルールづくりよりも目標設定による推進力を重視する点など、持続可能な開発目標のガバナンスの特徴について説明した。その後、慶應義塾大学経済学部の嘉治佐保子教授をモデレーターとして、参加者も交えたディスカッションが行われ、日本とオランダでの取り組みと両国間を含めた国際的な協力の在り方、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを循環型社会実現へ向けていかに活用するか、などが議論された。

写真 講演するファン・フェルトホーフェン大臣(在日オランダ大使館提供)

講演するファン・フェルトホーフェン大臣(在日オランダ大使館提供)

写真 パネルディスカッション(在日オランダ大使館提供)

パネルディスカッション(在日オランダ大使館提供)

(立川雅和)

(オランダ、日本)

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