「中欧班列」最大手オペレーターが企業再編、輸送増に向け体制整備

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、中国)

欧州ロシアCIS課

2019年06月10日

ロシア鉄道、ベラルーシ鉄道、カザフスタン鉄道の3社は6月4日、同3社が共同で出資する「統一輸送物流会社-ユーラシア鉄道アライアンス(OTLK ERA)」について、株主間契約に調印したと発表した。OTLK ERAは、中国と欧州を結ぶ定期コンテナ鉄道輸送のうち、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン共通の1,520ミリ軌間を担当する最大手オペレーターだ。出資する3社間でOTLK ERAの経営について合意に至ったことにより、今後、経営効率化と「中欧班列」のコンテナ鉄道輸送増に向けた活動を進める。

今回の合意では、ロシア鉄道、ベラルーシ鉄道、カザフスタン鉄道の3社の出資比率を各33.3%とし、同等の権利を認めることが決まったほか、取締役会に各社から代表2人を出席させること、配当方針や取締役会議長の交代に関する手続き、経営上の意思決定を行う過程での意見の不一致や紛争が発生した場合の解決方法などが取り決められた。各社は今回の合意について「ユーラシア連合(EEU)域内でのトランジット鉄道輸送の統合を継続する3社の意思を強化するもの」としている。

OTLK ERAの前身である「OTLK」は、ロシア鉄道が主導するかたちで2014年11月に創設。当初、現物出資の市場価格を基準に、出資割合はロシア鉄道が99.8%、ベラルーシ鉄道とカザフスタン鉄道が各0.1%とされた。2016年末までに、ベラルーシ鉄道、カザフスタン鉄道が欧州・中国と国境を接するターミナル駅資産(ベラルーシ・ポーランド国境はブレスト駅、カザフスタン・中国国境はドストゥク駅、アルティンコリ駅)をOTLKに追加現物出資する予定だったが、ロシア鉄道は両鉄道に対して現物出資は求めない方向へ転換。2017年12月の臨時株主総会で企業組織再編を決定し、同月にロシア連邦反独占局の認可を得て、2018年4月に再編手続き自体は終了していた。

OTLK ERAによる中国と欧州を結ぶコンテナ輸送実績(両方向)は毎年、大きく増加している。2015年に20フィートコンテナ4万8,000本だった輸送実績は2017年に17万5,800本、2018年には28万本まで増加。2019年第1四半期は前年同期比54%の6万2,622本となり(欧州から中国が2万7,086本、中国から欧州が3万5,536本)、2019年通年で35万本を想定する。OTLK ERAは、2019年4月にスロバキア国有ZSSKカーゴとの間でコンテナ輸送に関する協力で合意、リトアニア鉄道との間では中国とリトアニアをつなぐ郵便物(小包と電子商取引商品)の輸送協力に合意するなど、トランジット鉄道輸送増に積極的に取り組む。2018年8月末からは中国の成都・重慶・武漢市向けにベラルーシ産乳製品のコンテナ輸送も開始され(輸送期間は12日)、2019年1~4月には合計64本のコンテナ(牛乳など23本、粉ミルク41本)が輸送された。2018年には中国がベラルーシの粉ミルク・コンデンスミルク輸出先3位に浮上するなど、両国間の貿易増にも貢献している。

(高橋淳)

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、中国)

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