格付け大手がメキシコの長期国債格付けを引き下げ

(メキシコ)

メキシコ発

2019年06月07日

米国格付け大手のフィッチ・レーティングスは6月5日、外貨建て長期債務格付け、自国通貨建て長期債務格付けの両方を「トリプルBプラス」から「トリプルB」に引き下げた。なお、見通しは「ネガティブ」から「安定的」とした。

また、ムーディーズは同日に、メキシコのソブリン債の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。格付けについてはA3を維持している。

フィッチの6月5日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、引き下げの要因として、メキシコ石油公社(PEMEX)の財務状況の悪化、弱含みのマクロ経済見通しと、外的要因によるそれらへの影響、国内政治の不安定さと財源不足を挙げている。

同様に、ムーディーズは6月5日付のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、国内政治が予期しづらい状況にあり、経済が低成長にとどまっていることが投資家の信頼を損ねる要因となっており、中期的な経済見通しに悪影響を与えているとした。さらに、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール政権によるエネルギー政策の変更や、PEMEXへの財政救済策が不十分なことも併せて指摘している。他方、A3を維持した理由については、経済の多角化や財政収支のバランスの維持によって、リスクは大きくないとした。

日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)のカルロス・サラサール会長は、トランプ米大統領が発表したメキシコからの輸入製品への関税賦課(2019年5月31日記事参照)への対応のため訪れているワシントンで取材に応じた。同氏は、マルセロ・エブラル外相とマイク・ポンペオ国務長官の交渉が終了した直後の格付け引き下げ発表に対し、「非常に重要な交渉をしており、難しい状況の中で格付けを引き下げた対応には疑問が残る。この決定はエブラル外相が交渉で得たものを無に帰すものだ。タイミングが悪い」と不満を表明した(「エコノミア・オイ」紙電子版6月6日)。

(岩田理)

(メキシコ)

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