欧州自動車産業に厳しい市況見通し広がる

(EU)

ブリュッセル発

2019年06月28日

欧州自動車工業会(ACEA)は6月27日、2019年の欧州市場での乗用車登録台数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについて、年初に発表した前年比1%程度の成長とする楽観的な見通しを改め、マイナス1%の減少に下方修正することを発表した。また同日、米国自動車大手フォードは欧州での生産拠点閉鎖外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなど大規模な事業再編計画を発表した。

欧州自動車産業の経営に影を落とすブレグジット

ACEAは今回の厳しい市況見通しをブリュッセルで開催した年次総会で明らかにした。2019年の欧州での乗用車販売台数は1,500万台強にとどまるとみられる。

エリック・ヨナーACEA事務局長は今回の下方修正の背景として、「英国のEU離脱(ブレグジット)とマクロ経済環境の変化に伴う不確実性」を挙げた。特にブレグジットについては、「英国のEU離脱の結果、新たなビジネス障壁やコスト増、遅延などの影響が生じる場合、EUと英国双方の自動車産業の雇用と成長にとって深刻な脅威となる」と指摘し、今後の動きに注意喚起した。

なお、ACEAは今回の年次総会で、欧州自動車産業に関わる各種情報・データをまとめた「ポケット・ガイド(2019~2020年版)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。この中で、欧州自動車産業の雇用創出数(間接雇用を含む)は1,380万(EU全体の雇用の6.1%に相当)に達し、特に生産部門の直接雇用について見ると、ドイツで約87万、フランスで約22万、ポーランドで約20万、英国、ルーマニアで約19万、チェコで約18万など、各国の雇用に大きく貢献しているという。

他方、フォードは6月27日、欧州での事業再編計画を発表。電気自動車(EV)、スポーツ用多目的車(SUV)の強化策を打ち出すとともに、収益性・事業効率性改善のために下記の生産体制の見直しが必要として、大規模な事業刷新を進める方針を示した。

  • 英国(南ウェールズ)・ブリッジエンドのエンジン生産拠点の閉鎖
  • フランス・ボルドーのオートマチック・トランスミッション生産拠点の閉鎖
  • スロバキア・ケフネッツのトランスミッション生産拠点のマグナへの売却
  • ロシア(タタルスタン共和国)・ナベレジヌィエ・チェルヌィ組み立て拠点の閉鎖
  • ロシア(タタルスタン共和国)・エラブガ・エンジン生産拠点の閉鎖
  • ロシア(レニングラード州)・フセボロジスクの生産拠点の閉鎖(2019年3月28日記事参照

フォードでは、これらの事業再編を2020年末までに実施、欧州の生産拠点を現在の24から18に削減する方針だが、これに加えて、英国の事業会社の再編やドイツやスペインでの生産シフトの見直しにも着手する。同社ではこれらに伴い、約1万2,000の欧州での雇用に影響が出ると見積もっている。

(前田篤穂)

(EU)

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