5月の失業率は前月に続き歴史的低水準、雇用者数の増加ペースは鈍化

(米国)

ニューヨーク発

2019年06月13日

米国労働省が6月7日に発表した5月の失業率は3.6%と、市場予想(3.6%)と同水準だった(表1参照)。就業者数が前月から11万3,000人増加し、失業者数も6万4,000人増加した結果、失業率は前月(3.6%)から変わらなかった。2カ月連続で1969年12月(3.5%)以来の低水準となった。

適当な仕事が見つからずに職探しを断念した者や、不本意ながらパートタイム労働に従事する者(経済的理由によるパートタイム就業者)などを含めた広義の失業率(U6)をみると、前月から0.2ポイント低下して7.1%と、2000年12月(6.9%)以来の低水準となった。

労働参加率(注)は62.8%と、前月(62.8%)から変わらなかった。

表1 米国の雇用統計(5月速報)

5月の非農業部門の雇用者数の前月差は7万5,000人増と、前月(22万4,000人増)と比べて増加幅が縮小した。なお、3月は18万9,000人増から15万3,000人増へ、4月は26万3,000人増から22万4,000人増へと下方修正された結果、3月と4月の2カ月合計の増加幅は7万5,000人の下方修正となった。4月から5月への雇用増加の内訳を主要業種別にみると、対事業所サービス業や教育・医療サービス業などを中心に増加した(表2参照)。

表2 主要業種別雇用増加数(前月差)の内訳(5月速報)

こうした中、平均時給は27.83ドル(4月:27.77ドル)と、前月比0.2%増(4月:0.2%増)、前年同月比3.1%増(4月:3.2%増)となった。J.P.モルガン・チェースのチーフエコノミストであるマイケル・フェローリ氏は「雇用の成長ペースは明確に低下しているようだ」と指摘し、貿易摩擦激化による影響が一部含まれているかもしれないと述べた(ブルームバーグ6月7日)。また、バンク・オブ・ザ・ウエスト(本社:サンフランシスコ)のチーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は、今回の結果は「政府・連邦準備制度理事会(FRB)に対して、今後政策面で慎重に取り組むべきであることを明確に警告するものだ」と述べた(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版6月7日)。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(権田直)

(米国)

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