アイルランド・北アイルランド国境の新たな取り決め模索、諮問機関を設立

(英国、アイルランド)

ロンドン発

2019年06月28日

英国政府は6月26日、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴うアイルランドと北アイルランド間の暫定的な国境管理の安全策であるバックストップの恒久的な代替策を検討するため、産業団体・企業トップで構成される諮問機関を設立したと発表、第1回会合が同日開催された。この諮問機関には、アイルランド、北アイルランドと他の英国地域の代表が参加しており、主に企業や従業員の視点からの助言を政府に与える役割を担う。20日には、代替策の助言を英国政府に行う産官学の貿易・関税分野の専門家で構成する別の諮問機関が発足しており、共同議長であるスチーブン・バークレイEU離脱相が「最先端技術や、〔認可事業者(AEO)制度など税関手続き簡素化のための〕輸入スキームの導入、ITシステムの活用を含めた代替策を検討する」とコメントしていた。

バークレイEU離脱相は3月7日に、バックストップの代替策策定に関し、前述の産業団体・企業トップの諮問機関、産官学貿易・関税専門家の諮問機関に加え、国会議員から構成される諮問機関の3機関を設立する意向を発表しており、テレーザ・メイ首相がEUと暫定合意した離脱協定案の議会通過後に会合を開催する予定だった。その後、政府は3月11日、EUとの間でブレグジット後2020年末までの移行期間中に、将来関係について合意できない場合でも、代替策が合意されれば、その代替策を将来関係全体から切り離し、導入できることで合意していた(2019年3月12日記事参照)。3諮問機関は、アイルランド国境の物品移動手続きと簡素化のための方策を検討、政府は諮問機関の検討結果などの実証、実装に2,000万ポンド(約27億2,000万円、1ポンド=約136円)を拠出する。

また、6月24日には、政治団体のプロスパリティーUKが、保守党残留派で現在「ソフトブレグジット」を目指すニッキー・モーガン、グレッグ・ハンズ両下院議員を共同議長とする委員会によるバックストップ代替策に係る中間報告を公表した。報告では、将来生まれる先端技術を考慮せず既存の技術だけの活用を前提としても、税関によるベストプラクティスの実践などによって、3年以内に代替策を実施することができると提言している。

(木下裕之)

(英国、アイルランド)

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