第1四半期の公共建設投資、過去14年間で最低に

(メキシコ)

メキシコ発

2019年06月03日

国立統計地理情報院(INEGI)が5月23日に発表したデータによると、メキシコにおける2019年第1四半期(1~3月)の公的部門発注による建設業の総生産額(2013年基準実質価格)は345億9,400万ペソ(約1,972億円、1ペソ=約5.7円)となり、前年同期比18.0%減少した。同データが発表されている2006年以降で最低の数字だ(図1参照)。分野別に生産指数(民間部門の建設も含む)をみると、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)政権が最重視する石油や電力などを除けば、2018年1月の水準を下回って推移している(図2参照)。特に運輸や都市開発など、現政権下で公共事業が活性化するとみられていた分野でも、低迷が目立つ。

図1 建設業の公的部門実質総生産額(第1四半期)の推移
図2 建設業の分野別生産指数(2018年1月=100)

大蔵公債省のデータによると、2019年第1四半期の政府の実物投資額は前年同期比13.1%減で、国営石油会社(PEMEX)の投資額を除くと29.4%の減少となった(表参照)。経済開発面の投資では、燃料・エネルギー分野の投資が18.3%増だが、運輸部門は77.9%の大幅減となった。メキシコ建設業会議所(CMIC)の調査チームによると、連邦政府の1~4月の公共事業投資額は歳出予算上の予定額と比べて16%も少ない(「レフォルマ」紙5月28日)。AMLO政権下の緊縮財政による人員整理の影響で、想定していた工事の発注ができていないことが背景にあるとみられる。

表 公的部門の分野別実物投資額(第1四半期)

環境保護、保健など社会開発面における投資も減退

投資支出の減少は、環境保護(前年同期比84.4%減)や保健(19.2%減)など社会開発面の分野でも顕著だ。環境保護については、カンクンなどカリブ海リゾートを悩ませているサルガッスム(ホンダワラ類の海藻)の異常繁殖に対し、予算不足が原因で十分な対策が打てずにいることや、5月に入り全国的に頻発している山火事への対策不備が懸念されている。保健分野については、社会保険庁(IMSS)のヘルマン・マルティネス長官が5月21日に辞職したが、その理由は予算カットや人員整理により、医療関連スタッフや医薬品、機材が不足し、公営病院の運営が危機的状況に陥っていることについて警鐘を鳴らすことだった。

AMLO政権は人件費など経常的支出を減らし、投資支出を増やすと公約していたが、貧困層などを対象とする多数の補助政策や、新製油所、マヤ鉄道、サンタルシア空軍基地の商業開発といった重点インフラプロジェクトの投資予算を捻出するために、犠牲を強いられている政策分野があることが、次第に顕在化しつつある。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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