イングランドで賃借人を保護する新法が施行

(英国)

ロンドン発

2019年06月07日

英国のイングランドで、6月1日から2019年テナント(賃借人)手数料法(Tenant Fee Act 2019)が施行された。同法は居住用物件を対象とするもので、その目的は、住宅賃貸借契約の締結や更新、変更の際に、賃貸人や不動産仲介業者がさまざまな名目で課していた手数料や敷金(tenancy deposits)からテナントを保護すること。

同法の適用対象は、2019年6月1日以降に新規に締結される住宅賃貸借契約で、賃貸人が賃借人に対して第三者への支払い(注)を求めることが禁止されたほか、敷金にも上限が導入された。

なお、2019年6月1日以前に締結された契約に関して、同法の規定は2020年6月1日から適用される。従ってこの場合、賃借人は2020年の5月31日まで、当該契約書どおりに契約更新料を含めた支払いを履行することになる。

新法の下、賃貸人が契約で認められる費用は次のとおり。

  • 家賃
  • 敷金(退去時に払い戻し):年間家賃5万ポンド(約690万円、1ポンド=約138円)未満の物件では家賃の5週間分、5万ポンド以上の物件では6週間分が上限
  • 契約前の予約金(Holding deposit)(正式契約時に払い戻し):家賃の1週間分が上限
  • テナント側の要請による契約内容の変更に対する手数料:50ポンドが上限、それ以上の場合はやむを得ないと認められる経費分
  • テナント側の要請による契約満期前の賃貸借契約解除に係る違約金
  • 光熱・ガス水道料、通信サービス費、テレビライセンス税、カウンシルタックス税
  • 家賃延納加算金、鍵や警備機器などの紛失によって生じる諸費用(いずれも賃貸契約時に合意していること)

本法に違反した賃貸人と不動産仲介業者に対しては、3万ポンド以下の罰金が科せられる。なお、本法は地方自治体当局により監督・運用されるが、ブリストル市当局はモデル運用当局として、他の自治体に対して情報提供と相談受付を行う役割を担うことになる。

ジェームズ・ブロークンシャー住宅・コミュニティー・地方政府相は6月1日、同法により、賃借人に対する金銭的な負担が軽減され、賃貸借がより公平で透明性の高いものになるとし、住宅市場の環境改善に資するものとした。

政府は大家(賃貸人)、不動産仲介業者、テナントなどに対し、改正後の賃貸契約手続きに関するガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをオンライン上で公開している。

(注)例えば、住居内の清掃サービスに関して、賃貸人が特定の業者などを指定し、賃借人に当該業者への支払い求めること。

(新谷那々、岩井晴美)

(英国)

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