「ミスする権利」認めた政府、行政手続上の頻出ミスを紹介するサイト開設
(フランス)
欧州ロシアCIS課
2019年06月05日
フランスのジェラルド・ダルマナン行動・公会計相は6月4日、頻出する行政手続上のミスを状況別にリスト化して紹介する政府のポータルサイト「OUPS.gouv.fr」を開設した。「OUPS」は「しまった」「やらかした」という意味のくだけた表現だ。
フランスでは長らく、行政手続きの煩雑さが問題となってきた。行政府と市民の間の信頼感を高めるため、2018年8月10日の「信頼できる社会に奉仕する政府のための法律」は「ミスする権利」の原則を打ち立て、一連の措置を導入することを定めた。同原則はフランス人とフランス企業に対し、初回の行政手続き違反から経済的制裁を科されるリスクを負うことなく、「善意」で(違反となることを知らずに、という意味の法律用語)ミスを犯す可能性を保証するものだ。制裁の代わりに再発予防の説明を行うという教育的アプローチを導入する趣旨だ。これにより、善意で犯した初回のミスは、自発的にもしくは行政府の求めに応じて修正することができるようになった。ただし、公衆衛生、他者の人身や財産を害するミス、欧州や国際的な約束に違反するミスは、善意であってもその例外だ。
今回のポータルサイトは「より親身に相談に乗るという行政府の新たな姿勢を具現化」するものとして、フランス人とフランス企業による行政手続きを支援する目的で新設された。
トップページには個人向けの行政手続き上のミスのリストが、状況別(高等教育、転居、失業・求職、就業、結婚などのカップル化とその関係の解消、出産・養子縁組、納税など)に掲載されている。トップページからリンクで飛べる企業向けページでも、6つの状況別に頻出ミスを紹介している。進出日系企業や進出を検討する日本企業にも有益な情報だ。
企業向けページが扱う各場面と、各場面のリストの筆頭に掲載されているミスは次のとおり。
- 社会保障費の支払い:労災と職業病に関する負担率のミス
- 関税・税法上の義務:エネルギー関連商品の消費にかかる内税の不払い、税関での数量申告ミス)
- 農家:所得申告上のミスもしくは申告漏れ
- 採用:職業安定所に誤記を含む求人情報を登録
- 納税:最新の銀行口座情報の不記載
- 雇用契約の解消:対象従業員が失業手当を得るために必要となる雇用主からの証明書を職業安定所へ提出することを失念
(上田暁子)
(フランス)
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