知的財産庁、IP訴訟費用を保険でカバーへ
(シンガポール)
シンガポール発
2019年06月25日
シンガポール知的財産庁(IPOS)は6月13日、企業が開発した知的財産(IP)に関する訴訟費用を、保険で補償が可能になる新たなイニシアチブ「イノベーターのための知的財産保険イニシアチブ(IPIII、注1)」を発表した。同イニシアチブにより、シンガポールの特許、商標、登録意匠を持つ企業は、IPに関する訴訟費用を補償する保険に加入することができる。
IPOSは、保険リスクを引き受ける市場を展開するロイズ・アジア、保険引受会社のアンタレス・アンダーライティングアジアと共同で、同イニシアチブを発表した。アンタレスは、ロンドンのロイズ保険市場の「シンジケート1274」(注2)を代表し、同保険の引受会社となっている。
補償範囲については、知的財産のカバーとライセンス保護の2つのセクションに分かれている(表参照)。なお、同イニシアチブにより、保険加入時にシンガポールのIPの出願番号を示すことで、年間保険料から20%の割引が期間限定で適用される。
2018年時点で世界における無形資産額が50兆ドルを超え(注3)、特にアジアにおいては、2007年から2017年までの特許出願数が年平均で12.7%増と、世界の他地域と比べ2倍の速さで増加している(注4)、とIPOSは指摘する。デジタル技術を活用する、グローバル市場で展開する企業が抱える新たなリスクとして、知的財産権の行使や、知的財産侵害の申し立てへの防御の際に発生する高額な訴訟費用を挙げた。IPIIIは、当リスクに対する備えとして打ち出されたかたちだ。
(注1)Intellectual Property Insurance Initiative for Innovators
(注2)ロイズ保険市場には多くの「シンジケート」があり、世界のさまざまな損害保険商品のリスクを引き受けている。
(注3)Brand Finance社リリース参照。
(注4)世界知的所有権機関(WIPO)データセンターに基づく統計データ。
(安野亮太)
(シンガポール)
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