ロシア水産バイヤー、食品輸入禁止措置の影響を受け、日本からの調達目指す

(ロシア)

モスクワ発

2019年06月17日

日本の農林水産省が3月27日に発表した「農林水産物輸出入概況2018年」によると、2018年のロシア向け水産物輸出額は前年比62.1%増の28億6,200万円(国・地域別16位)で、ロシア向け食品輸出の6割を占める主要品目となっている。

ジェトロは8月に東京で開催される「ジャパン・インターナショナルシーフードショー」に合わせて、海外バイヤー招聘(しょうへい)商談会を開催する予定で、ロシアからは2社の水産バイヤーが参加する。その2社へのインタビューを実施。モスクワ所在の「ロシアン・フィッシュ・カンパニー(RFC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は1997年設立。ロシアの水産物輸入で13%のシェアを誇るロシア最大の水産物輸入卸売企業だ。アレクサンドラ・チモフェエワ購買部長と、タチアナ・ジルノワ購買スペシャリストに話を聞いた(6月7日)。

写真 チモフェエワ購買部長(左、来日予定)とジルノワ購買スペシャリスト(RFC提供)

チモフェエワ購買部長(左、来日予定)とジルノワ購買スペシャリスト(RFC提供)

(問)貴社の特徴は。

(答)ロシア全土に販売ネットワークを有し、各地域の物流パートナーと連携して、徹底した温度管理による配送を行っている。販売先は小売店や缶詰工場、レストランなど多様で、取扱製品の価格帯も幅広いが、特に小売店向けのマスマーケット製品に強みがある。

(問)欧米諸国からの経済制裁への対抗措置として、2014年にロシア政府が導入した食品の輸入禁止措置の影響はあるか。

(答)輸入禁止措置やルーブル為替レートの下落により、水産物輸入業者は厳しい環境に置かれている。2018年のロシア全体での水産物輸入量は2013年比で半分近く減少した(注)。そのため、極東や北極圏を中心にロシア国内からの調達量を増やしている。また、以前はノルウェーやアイスランド、米国、カナダなどから輸入していたが、現在は輸入禁止措置の対象に入っていないグリーンランドやフェロー諸島、チリ、中国、日本などから調達している。価格の都合から冷凍魚を中心に船便で運んでいる。

(問)調達先との支払条件は。

(答)以前は保険を利用した後払いが主流だったが、欧米からの経済制裁以降、ロシア企業に対する保険会社からの信用が悪くなり、現在は前払いが基本。長年取引があり信頼関係を築いている相手とは事後払いも一部ある。

写真 取扱製品(冷凍スケソウダラの切り身)(RFC提供)

取扱製品(冷凍スケソウダラの切り身)(RFC提供)

(問)日本から調達を希望する魚種は。

(答)缶詰や薫製用としてサンマやイワシなど、高級レストラン向けにはハマチやマグロなどを調達したい。また、油が少ないものが好まれるため、小ぶりなものが良い。日本の水産品は、きれいに陳列・梱包(こんぽう)されており品質が良い。価格は決して安くないが、品質を考慮すれば当然調達対象になる。日本からの調達量はまだ全体の1%にすぎないが、これから量・種類ともに強化していきたい。

(注)連邦税関局の統計によると、冷蔵魚・冷凍魚(HSコード0302~0304)の2013年の輸入量は約77万5,000トン、2018年は約40万7,000トン。

(戎佑一郎)

(ロシア)

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