欧州委、中国の新たな貿易障壁が257億ユーロのEU輸出に影響と試算

(EU、中国、米国)

ブリュッセル発

2019年06月25日

欧州委員会は6月17日、欧州企業の報告に基づくEU域外の貿易投資の問題点をまとめた2018年版「貿易投資障壁報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。

鉄鋼・アルミ・ICT製品の輸出に大きな影響

報告書は、日本や米国も含むEU域外23カ国の45件の施策を貿易と投資に対する障壁として新たに特定し、これらの措置によりEU28カ国からの最大514億ユーロ相当の商品の輸出に影響が生じたと試算した。67件の新たな障壁により231億ユーロの輸出に影響があった2017年と比較し、件数は減少したものの、影響範囲は大きく拡大。累計では、59カ国の425件の施策が欧州企業の貿易・投資の障壁になっているとした。

国別では、中国で新たな障壁4件(影響額257億ユーロ)を特定し、累計で37件となった。特に「中華人民共和国サイバーセキュリティー法」施行のために情報通信技術(ICT)分野で導入した規制を問題視し、ICT・電子機器分野で249億ユーロの輸出に影響が生じたと試算した。米国については、1962年通商拡大法232条に基づくEU産の鉄鋼とアルミニウム製品への追加関税など4件の施策を新たに障壁として特定。2018年内に解消した1件を除いた残りの3件の障壁によって影響を受けた輸出の総額を68億ユーロと試算した。欧州委は、中国と米国、インド、アルジェリアの合計18件の新たな障壁の影響が特に大きく、鉄鋼とアルミニウム、ICT製品を中心に、総額418億ユーロの輸出に影響を与えたと分析した。

報告書は障壁の撤廃についても言及。2018年にはEUの主要輸出・投資8部門(農水産品、自動車、繊維・皮革製品、ワイン・蒸留酒、化粧品、鉱物製品、航空部品、ICT機器)で、日本や中国、インド、ロシアなどの35件の貿易障壁が撤廃されたと報告。中国における一部のEU加盟国産のウシ・ヒツジの精液・卵の輸入制限の撤廃や、ロシアによるドイツ・イタリア原産の軽商用車に対するアンチダンピング措置の停止などを挙げた。 日本に関しては、厚生労働省が認可対象の添加物リストからEUのワイン・蒸留酒業者に影響し得る添加物を削除することを検討していたが、欧州委員会が要請して維持することに成功したことを挙げた。

(村岡有)

(EU、中国、米国)

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