対米輸出を視野に入れた中国系企業のメキシコ進出が加速

(メキシコ、中国、韓国、日本)

メキシコ発

2019年05月09日

中国系企業のメキシコ進出が加速している。メキシコ経済省のデータによると、2018年の中国からの対内直接投資額は前年比22.9%増の2億5,020万ドルに達し、特に製造業の投資が自動車産業を中心に約5.3倍に増加した。韓国、日本、中国からの進出企業数を2011年以降で比較すると、中国系企業の増加ペースは他の2カ国と比べると緩やかだが、2018年の1年間だけでみると、中国系企業は67社も増えており、韓国の44社、日本の36社を上回っている(添付資料の図1参照)。

中国系企業を進出州別にみると、首都メキシコ市への進出が圧倒的に多いが、2017年以降に進出した企業だけでみると、ハリスコ州、ヌエボレオン州、サンルイスポトシ州への進出が比較的多い(添付資料の図2参照)。業種別では、中国系企業の大半が卸売業や小売業といった商業を営む企業だが、2017年以降の進出企業だけでみると、製造業の比率が相対的に上昇している(添付資料の図3参照)。特に近年は対米輸出拠点として有利なヌエボレオン州、サンルイスポトシ州への中国系製造業の進出が多い。

米中貿易紛争の影響も

2019年に入り、北東部や北部諸州への中国企業の視察が増えているようだ。ヌエボレオン州経済労働局(SEDET)が「レフォルマ」紙に伝えた情報によると、2019年に入ってから25の中国系企業視察団が同州を訪れ、42の投資プロジェクトが同州で検討されているという(「レフォルマ」紙5月7日)。

中国系企業の進出増加の背景には、米国の1974年通商法301条に基づく中国製品への追加関税措置の影響があるとみられている。メキシコ進出に向けたコンサルティングや企業設立・経営支援を行うプロデンサ(Prodensa)グループによると、過去1年間で20社の中国系企業に対米輸出拠点設立に向けたサービスを提供し、そのうち10社はメキシコあるいは米国への投資を決定したという。また、大手不動産会社コリアー・インターナショナル(Collier International)によると、2019年初から既に30社がヌエボレオン州の州都モンテレイ近郊の物件を調査している。また、北部コアウイラ州とドゥランゴ州の境に広がるラグーナ地方の自動車産業クラスターによると、同地域でも中国系企業の視察が増えており、工具を製造する企業の5,000万ドルの投資が具体化しつつあり、2,000人の雇用が生まれるという(「レフォルマ」紙5月7日)。

(中畑貴雄)

(メキシコ、中国、韓国、日本)

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